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2022.1.31
BPO(Business Process Outsourcing)とは?アウトソーシングとの違いやメリットデメリットついて解説
アウトソーシングの一種であるBPO。一般的なアウトソーシングとBPOにはどのような違いがあるかをご存知でしょうか?本記事では、BPOの概要やメリット・デメリット、BPO導入を成功させるためのポイントを解説します。
記事の後半では、企業におけるBPOニーズの増加が、コンサルティング業界とどのように関係しているかについても触れています。BPO関連のコンサル求人にご関心のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
BPOとは
BPO(Business Process Outsourcing)とは、人事や経理、情報システムといった特定業務プロセスの企画・設計から実施までを一括して外部の専門業者に委託する仕組みです。
BPOは、その名の通りアウトソーシング(外注・外部委託)の一種であり、人事や経理、情報システムなど、組織の課題・ニーズに合わせてBPOする業務を選択することができます。
一般的なアウトソーシングとBPOの違い
一般的なアウトソーシングの主目的は「人手不足の埋め合わせ」であるのに対し、BPOは「業務の効率化」を含む経営戦略の一種に位置付けられるという違いがあります。
たとえば、経理業務をアウトソーシングする場合、人材派遣会社から足りない人材を派遣してもらう、または、外部業者に代行してもらうといった流れになります。
BPOでも外部業者に業務を委託しますが、経営戦略の一環として業務全体を一つのパッケージとして委託します。
たとえば、経理業務をBPOする場合、単に人手不足の埋め合わせのために一部の業務を外部委託するのではなく、経理部門の企画・設計から実施までを一括で委託するといった流れになります。
企業がBPOを導入する目的は、社内リソースをより優先度の高いコア業務に配分するためです。
BPOを適切に取り入れることにより、人的・金銭的リソースの無駄の削減、業務フローの最適化、それに伴う生産性・競争力の向上といった効果が期待されます。
BPOの活用が多い業務領域
BPOで委託できる業務領域は、営業、テレアポ・コールセンター運営、システム開発をはじめ、多岐に渡ります。
その中でもBPOの活用がとくに多い業務領域としては、人事・総務・経理・情報システムなどの「間接業務」や量産品などの「製造業務」、商品発送などの「物流業務」などが挙げられます。
また、コア業務のみを社内リソースで賄い、他は外注にするなど、目的に合わせてBPOを利用するといったケースもあります。たとえば、人事関連のBPOとしては、以下のようなものがあります。
【人事関連のBPOの活用例】
・給与管理
・年末調整関連業務
・勤怠管理
・福利厚生管理
・採用・退職管理
・人事情報システムの保守
また近年は、BPOの活用は日本国内にとどまらず、安価な労働力の確保が可能なオフショア業務での活用も拡大しています。
とくに、日本語ができる人材を獲得しやすい中国に籍を置く日本企業が、現地のBPO業者を活用するケースが増加傾向にあります。
BPOを導入するメリット
ここでは、企業がBPOを導入する3つのメリットを紹介します。
- コスト削減が可能
- 業務改善・効率化が可能
- グローバル化への対応がスムーズ
一つずつ見ていきましょう。
コスト削減が可能
BPOを導入することで、オフィスの賃料や人件費、使用システム運用のための固定費を削減・最適化することが可能です。
固定費の中でも、人件費はBPOの効果がとくに出やすい項目といえます。
社内リソースの場合、一般的に無期限の「雇用契約」を結ぶため、中長期予算計画に合わせてその都度人員を増やしたり減らしたりすることは難しいものです。
その一方、BPOリソースの場合、期限付きの「委託契約」を業務ごとに結ぶことになるため、契約変更を比較的柔軟に実施することが可能です。
そのため、将来的に人的リソースからITシステムへの切り替えを計画している業務に関しては、早い段階でBPOを導入しておくことで、システム移行や人件費削減プロセスがスムーズになるでしょう。
業務改善・効率化が可能
専門性を有する外部企業のBPOを活用することで、業務品質の向上が期待できます。
それと同時に、社内リソースを優先度の高いコア業務に配分することが可能になり、業務改善、効率化へと繋がります。
また、比較的緊急性の低い通常業務をBPOで外部に一任しておけば、緊急対応を要する業務が発生した場合にも、通常業務が滞る心配がありません。
グローバル化への対応がスムーズ
近年のグローバル化に伴い、国内のみならず中国や東南アジアなど、オフショア展開をする企業も増えてきています。
海外進出をする際には、現地の文化事情や法律に詳しい人材が必要不可欠となりますが、
自社内でそういった人材の確保が難しい場合、現地のBPO業者に業務を委託することで、必要なノウハウや知識を補うことができます。
BPOを導入するデメリット
BPO導入にはメリットがある一方、次に挙げるようなデメリットも伴います。
- 業務のノウハウが社内に蓄積しにくい
- 業務委託完了までにトラブル発生の可能性あり
- 情報漏洩のリスクがともなう
それぞれ見ていきましょう。
業務のノウハウが社内に蓄積しにくい
一般的な業務をBPOにより外注すると、新入社員や部署移動してきた社員に対して、業務のノウハウを共有しにくくなってしまう可能性があります。
業務のノウハウが社内に蓄積していないと、何らかの事情によりBPOの導入を取りやめた際に、外注していた業務を進める方法を社員の誰一人としてわかっていないという状態に陥りかねません。
このような事態を防ぐためには、BPOする業務を外部業者に丸投げするのではなく、
委託業務のモニタリングやマニュアル共有を定期的に実施し、該当業務について熟知している人材を社内で育成することが重要です。
業務委託完了までにトラブル発生の可能性あり
BPOの導入時には、すべての業務を委託しきるまでにある程度の「移行期間」が必要となります。
そういった移行期間中には、認識の相違や抜け漏れ、現場の不慣れから来る業務遅延といったさまざまなトラブルが発生する可能性を想定しておく必要があります。
とくに、委託内容が専門性や複雑性の高い内容である場合、すべての業務を委託しきるまでに想定以上の時間がかかる場合もあります。
その間に生じうるトラブルの責任をどこが持つのか、判断するのに時間がかかり業務が滞ってしまうケースもあります。
また、すべてを委託しきった後で、委託先にて想定外のトラブルがある可能性もあります。
BPO業務における想定外のトラブルを最小限に抑えるためには、段階的かつ無理のない移行計画の立案、外部業者との密なコミュニケーション、委託内容の明文化(マニュアル化)といった対策が考えられます。
情報漏洩のリスクがともなう
BPOを導入し業務を委託するということは、自社の保有する機密情報やノウハウの一部を外部と共有することを意味します。
近年は、インターネット上のサイバー脅威なども増えており、作為的でなくとも情報漏洩は起こる可能性があります。
そのため、BPOを導入する以上、いかなる企業にとっても情報漏洩のリスクは決して他人事ではありません。
情報漏洩のリスクを未然に防ぐためには、情報の管理が厳格に行われているBPO業者の選定、秘密保持契約(NDA)の締結といった対策が必要不可欠といえます。
BPO導入を成功させるポイント
BPOを実際に導入する際には、リスクや失敗、損益を未然に防ぐために多くのことを検討する必要があります。ここではBPO導入を成功させるためのポイントを解説します。
- 企画段階:外注する業務範囲の選定
- 契約前:BPO業者のサービスの内容をしっかりと把握する
- 契約中:PDCAで業務の質を担保
- 導入全般:業務コンサルタントの活用
企画段階:外注する業務範囲の選定
業務のどの部分をBPO化するのかを明確にするために、外注する業務範囲の選定は重要です。たとえば、コスト削減、業務効率化など、目的によって外注するべき範囲は変わってきます。
自社内にノウハウを残したい業務(コア業務など)の外注はなるべく避け、まずは代替性の高い周辺業務から導入するのが安心です。
契約前:BPO業者のサービスの内容をしっかりと把握する
BPOを委託する業者の選定は、BPOの成否を握るといっても過言ではありません。
BPO業者の対応範囲・合意内容を事前にしっかりと把握・協議し、契約後の不確定要素を極力減らしておくことが成功の秘訣です。
具体的には、下記のような点を事前に把握しておくと安心です。
- BPOの導入目的に合ったサービスを提供可能か
- 外注を希望する業務範囲を提供可能か(スコープ定義)
- 予算とコストの均衡が取れているか
- 資本や社員数など企業体力に問題のない会社であるかどうか
- 作業環境や使用ツールの指定
- データの保管場所の指定(情報セキュリティ体制)
- サービス品質保証(SLA)の有無
先述したとおり、BPOでは自社の保有する情報を外部へ共有することになるため、情報セキュリティ体制が万全であるBPO業者を選定することは最重要事項といえます。
情報セキュリティのリスクを最小限に抑えるためには、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)やプライバシーマークを取得しているBPO業者を選定するのが安心です。
契約中:PDCAで業務の質を担保
BPO契約中は、PDCAサイクルを回し続けることで、BPOの業務品質を一定に保つことが大切です。
業務の質を保つための具体的な施策例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 業務プロセスのドキュメンテーションにより、業務内容のブラックボックス化や属人化を極力排除
- ITサービスマネジメント
- 定期的な監査(生産性、セキュリティ、社員教育)
導入全般:業務コンサルタントの活用
BPOの請負を生業にする企業には、専門業務に関わるノウハウやフレームワークが蓄積されているため、BPOの発注先企業と請負先企業のみでBPOを進めることも可能ですが、
BPOの内容によっては、業務コンサルがプロジェクトメンバーに加わるケースも多いです。
たとえば、複数業務部門を組みわせた「複合BPO」や海外拠点への部門移管といった難易度の高いプロジェクトの場合、
企画の立ち上げからプロジェクトが軌道に乗るまでの間、プロジェクトの管理事務局に業務コンサルを招へいするケースなどがあります。
また、コロナ禍でビジネス環境が大きく変わる中、経費削減や業務効率化、業務改善の一環として、BPOを導入する企業が増えており、BPO市場規模が拡大傾向にあります。
たとえば、株式会社矢野経済研究所の「BPO市場に関する調査」によると、2020年度のBPO市場は前年比の2.1%増のプラス成長が予測されています。
参照:BPO市場に関する調査 | 株式会社矢野経済研究所
そのような現状において、数ある選択肢の中から自社のニーズにあったBPO業者を選ぶための助言をコンサルタントから得ることを有益な投資と考える企業も増えてきています。
そういったBPOのコンサルティングニーズの増加に伴い、総合系・IT系をはじめとする各種コンサルティングファームにおいても、BPO部門が重点領域の一つに位置付けられています。
たとえば、総合系コンサルティングファームのBIG4の一つ、アビーム社には、BPOに特化した部門が設置されています。
BPO導入を提案する場合がある業務コンサルタントの仕事内容については、以下の記事でより詳しく解説しています。
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まとめ
BPOとは、人事や経理、情報システムといった特定業務プロセスの企画・設計から実施までを一括して外部の専門業者に委託する仕組みです。
その目的は、単なる人手不足の解消にとどまらず、経費削減や業務効率化といった企業戦略の一環として位置付けられています。
昨今の社会情勢の変化により、企業におけるBPOのニーズが年々増加しており、BPO関連のコンサルティングを必要とする企業も増加しています。
弊社Liberty Nation(リバティネイション)はフリーランスコンサルタントに特化したエージェントであり、業務コンサルを含むフリーランスコンサルタント案件を多数取り扱っています。
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