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2022.1.31
SCMとは何?注目される背景から導入のメリット・注意点などを詳しく解説!
全体最適化を目指す経営手法として、今SCM(サプライチェーンマネジメント)が注目されています。
物流に携わっている人はそもそもSCMとはどのようなものか、導入のメリットには何があるのかなどを改めて理解したいのではないでしょうか。
今回はSCMについて簡単に説明したのち、混同されがちなERPとの違いや具体的な導入方法についても紹介します。SCMに関心を持っている人は、ぜひチェックしてみてください。
SCMとは
SCM(サプライチェーンマネジメント)とは、原材料が調達されてから商品が消費者に届くまでの生産・流通プロセスのことで、言い換えれば「供給連鎖」になります。
業界における流通のプロセスを総合的に見直し、全体の効率化と最適化を実現させるための経営管理手法です。
SCMは広義的、狭義的な意味でそれぞれ分けられます。
広義の意味では、原材料の調達から製造、在庫管理、販売といった一連のサプライチェーン全体を最適化し、顧客に裁量価格で商品を提供、企業としての利益を最大化するための考え方です。
一方で狭義の意味では、企業内のサプライチェーン全体を最適化することで生産性を高めていくための管理手法のことを指します。
トヨタ自動車の「かんばん方式」は、このSCMの概念を具現化しているモデルとして有名です。
SCMが注目される背景
SCMが注目される背景について紹介します。
- 企業の国際化
- 労働環境の変化
- ビジネスモデルの変化
- コスト意識への高まり
企業のグローバル化
大きな背景として、1つには企業のグローバル化があります。物流に関して世界規模のネットワークが張り巡らされるのが、当たり前の社会になってきているのです。
グローバルな生産・物流プロセスの中では、モノやサービスの一元管理ができなければしなければ他社に遅れを取ってしまいます。
そのため、サプライチェーン全体でモノ・カネ・情報の流れを連携管理する必要性が高まっています。
人手不足の増加
少子高齢化により労働人口が減少、人手不足によりSCMが注目されています。
とくに物流の世界ではトラックドライバーの不足が顕著です。
そのような状況の中で、各企業はより効率的な物流のプロセスを考えていかなければいけません。
これからはSCMにより仕入れ量を適正化して無駄な物流を省き、卸売企業、販売店舗への配達タイミングを最適化する必要があります。
ビジネスモデルの変化
ビジネスモデルの変化もSCMが注目されている理由の1つです。
従来販売するものは別個に流通していましたが、今では販売と配送が一体化されたECが主流になってきています。
SCMを導入し総合的な管理体制を構築していかなければ、企業として生き残れなくなってしまうのです。
コスト意識への高まり
企業のコスト意識が高まってきておりSCMが注目されています。
日本でSCMが注目されたのは2000年ごろ、バブル経済崩壊後の長期低迷期にあり各企業で利益を改善するための経営革新が求められていました。
その中で注目されたのがSCMです。SCMを導入することで原材料調達から販売に至るまでの流れを整備できるようになり、コストや人員を最適化できます。
SCMはキャッシュフローの改善、引いてはコスト削減につながるものとして期待されているものです。
SCM導入のメリット
SCMを導入するメリットはどのようなものがあるかについて、以下3点を見ていきましょう。
- 在庫を最適化できる
- リソースを最適化できる
- コスト削減につながる
在庫を最適化できる
SCM導入により在庫を最適化できます。
これまで販売業ではチャンスロス(機会損失)をおそれるあまり、必要以上に在庫を抱えるという問題がありました。
しかしSCMを導入する企業では在庫量を適正化し、全体適性を実現できるようになったのです。
具体的には店舗で売れた数量をもとに需要予測を立てて、その予測から生産計画や原材料を調整するような流れです。
在庫が最適化されると、企業全体のキャッシュフロー改善にもつながります。
リソースを最適化できる
SCMで物流情報を一元管理すれば経営リソースを最適化できます。
調達から販売に至る流れが可視化され、業務プロセス全体を俯瞰的に見渡せるようになるからです。
具体的には、原材料の調達が適切に行われているか、生産工場の設備が過不足なく配置されているのかなどが把握できるようになります。
多くの企業は人手不足という問題を抱えているため、人的リソース最適化が最優先の課題です。SCMはサプライチェーン全体を可視化できるため人的リソースも最適化できます。
コスト削減につながる
SCM導入によりコスト削減が可能です。
企業の経営課題の着地点は利益の最大化なので、コストを削減することで収益基盤が強化されます。
たとえば、製造業で言えば生産工場において人件費、光熱費、固定資産税など多くの費用負担があるのでコスト削減の意識が必須です。
SCMを導入すれば、物流拠点に応じた的確な人員配置や物流業務の標準化が実現できるでしょう。
SCM導入で気をつけるポイント
メリットの多いSCMですが、導入時に気をつけたいポイントがあります。
- 導入時のコストが高い
- 視野が狭くなる可能性がある
導入時のコストが高い
SCMは導入時にコストがかかります。
SCMは物流に関わる全ての企業情報を一元管理するためのシステム構築が必須なので、大規模なITインフラが求められるでしょう。SCMの運用・保守に関しても管理費用が発生します。
しかしながら近年はクラウド型のSCMも登場しているため、これらを上手く活用すれば比較的導入コストを抑えることが可能です。
視野が狭くなる可能性がある
SCMに依存し過ぎると視野が狭くなってしまう可能性があります。
販売情報や在庫情報など効率化だけに注力してしまうと「何が売れる商品なのか」という基本的な意識が抜け落ちてしまうからです。
そのためSCMを有効に活用し、企業としても広く市場を俯瞰して経営戦略を打ち出していく姿勢が求められます。
SCMを構成するシステム
SCMを構成する主なシステムは、大きく分けて次のとおりです。
- SCP
- SCE
- PLC
- DCS
- BI
- ERP
SCP
SCP(Supply Chain Planning)は、SCMシステムの中の計画系に分類される要素です。
主に需要予測や計画生産、在庫計画、物流計画、資材計画、納期回答、需要調整といった機能があります。
SCPでは全工程・事業所に対してコンピューターで瞬時に計算して最適な結果を出すことが可能です。
SCE
SCE(Supply Chain Execution)はSCMの実行系に分類される要素です。
主に物流センター管理と輸配送管理があり、ロジスティック実務を情報面からサポートします。在庫確認や荷物の現在地を特定するのが特徴です。
SCEはインターネットや電子データ交換を介して、リアルタイムでSCPソフトやERPと連携し需要や計画変更に素早く対応できるようになっています。
PLC
PLC(Programmable Logic Controller)は専用のコンピュータによりシーケンス制御をするもので、SCMでは制御系に分類されます。
自動車や電子機器など製造ラインのファクトリーオートメーションシステムをはじめ、半導体製造から金属機械まで、さまざまな工場設備に用いられているものです。
PLCはフィードバック制御機能も備わっており、操作量を加減しながら目標値に近づける制御実施ができます。
DCS
DCS(Distributed Control System)は、大規模なプロセス制御対象に向けて複数のコントローラーで協調・統合した制御をします。PLCと同様に、SCMの中では制御系に分類される要素です。
製品が連続的に作られ、複数の装置が同時に動く現場で用いられることが多く、DCSを活用すればトラブルが起きた際も柔軟に対応できます。
PLCでは対応できないような大規模システムも組み上げられるのが、DCSの強みです。
BI
BI(Business Intelligence)は、企業が蓄積している情報を必要に応じて分析・加工できる仕組みで、SCMの中では分析系に分類されます。
従来は情報システム部門の人が専門的なシステムを使いマニュアル的に報告するのが一般的でした。しかしBIなら現場のスタッフが直感的にソフトを操作してデータを抽出、分析できます。
移動中でもモバイルからアクセスできるのが特徴で、迅速な経営判断が行えるのもメリットです。
BIについては以下の記事で詳しく解説しています。
▼関連記事
最新のBIツールを徹底比較!選び方や代表的なBIツール5選を紹介
ERP
ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業資源を一元管理するシステムです。
主に販売管理、在庫管理、会計管理といった基幹システムに相当します。
よくERPはSCMと混合されることがありますが、調達から販売といった業務に限定されない点が大きな違いです。両者の違いについては、後ほど詳しく解説しています。
SCMの導入方法
SCMの導入方法について見ていきましょう。
- 範囲の設定
- 参加企業の選定
- SCMリーダー企業の選出
- SCMインフラを整える
- 信頼関係の構築
範囲の設定
まずSCMを導入する上で範囲の設定をします。
部分最適ではなく全体最適で範囲を考えることが大切です。
全体最適に切り替えることで、個々の部門・機能がシームレスな連携を取れるようになり、期待以上の結果が得られるでしょう。
ただし全体の範囲は時間の経過、また環境変化とともに徐々に拡大させていく必要があります。
参加企業の選定
SCへ参加要請する企業を選びましょう。
担当範囲において高い付加価値を提供する能力、全体としての付加価値創出に貢献できる能力を持つ企業をピックアップし、SCへの参加を要請する必要があります。
さらに選定後はSCMリーダー企業を選ぶことが大切です。SCMに対して明確なビジョンと具体的な方法論を持っているのかどうかが判断の基準となります。
SCMリーダー企業の選出
次にSCMリーダー企業の選出を行います。
SCM構築の際、改革のテーマに対してビジョンを明確にし具体的な方法論を持っている企業がリーダーシップを取る必要があるからです。
範囲設定をする際に自ずと決まっている場合もありますが、場合によっては企業が役割として担っていくこともあります。
SCMインフラを整える
次のフェーズではSCMインフラを整備しましょう。
SCM参加企業同士で正確かつ迅速に情報共有を行えるようにするためです。
近年はインターネットの普及により大量のデータを送受信ができるようになったため、Web-EDI、XML等の選択肢も増えてきています。
インフラの整備には独自システムの構築が求められる性質上、システムの運用・保守も考慮しなければいけません。
そのため導入の注意点でも解説したとおり、ある程度のコストを負担する覚悟が必要です。
信頼関係の構築
インフラを整えたのち、SC参加企業間で信頼関係を構築していきましょう。
情報共有やリスクの共有によって信頼関係は構築されていきます。
SCMリーダ企業を中心に、「情報の共有」と「リスクの共有」に関するルールを確立し、SCMの成果を実現する具体的活動を一歩ずつ進めていくことが求められます。
SCMとERPの違い
SCMと混合されることの多いのがERPです。似通った部分もありますが、厳密には異なります。
ERPはSCMのように調達から販売といった業務に限定されない点が大きな違いです。
ERPは「Enterprise Resource Planning」の略称で、ヒト・モノ・カネ・情報といった企業の経営資源を一元管理し効率的に運用するマネジメント手法のことです。
ERPはSCMを含んださらに広い意味での効率化を意味しているため、管理する領域がそれぞれ異なっています。
EPRについては以下の記事で詳しく解説しています。
▼関連記事
ERPって何?導入のメリットや種類、基幹システムとの違いをわかりやすく解説
ERPコンサルタントの仕事内容とは?必要な資格や年収相場についても解説!
まとめ
SCMは物流業界に大きな変化をもたらすシステムで、各企業で導入が進められています。
そのためSCMに関する仕事は需要が高く、今後も市場規模が拡大すると予測されている人気職種です。
また近年は、SCMを構築するためのパッケージソフトも登場しているため、企業ごとの課題を理解したSCMコンサルタントの需要が高いです。
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