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2022.3.2
中期経営計画とは?目的や作り方、メリット、注意点をわかりやすく解説!
中期経営計画は、その名の通り中期的な経営方針を具体的に定めたものです。この計画があることで、企業は長期的な理想を実現するために足元で何をすべきかを整理できます。
本稿では、その中期経営計画の概要や目的、メリット、作り方、事例などを分かりやすく解説します。
中期経営計画とは
中期経営計画とは、企業の「将来あるべき姿」と現状との差を埋めるために設定する、3〜5年ほど先を見据えた経営計画のことです。
一般的には、売上目標や利益目標、ROEなどを定量的な数値で示します。
中期経営計画と混同されやすいものとして「長期経営計画」があります。長期経営計画も中期経営計画と同様に経営上のビジョンと現状の差を埋めるための計画です。
異なるのは計画のスコープで、明確な定義は存在しませんが長期経営計画の場合は5〜10年程度を指す場合が多いです。
また、中期経営計画ほど細かな定量数値は設計されないことが多く、注力ドメインなどの基本方針や長期的な経営の見通しなどが挙げられます。
中期経営計画を作成する目的
中期経営計画を作成する一番の目的は、自社が進むべき方向性を具体化し、長期・短期経営計画を実行しやすくすることです。
そのため「今、何をなすべきか」を明らかにすることを狙いとして策定されることが一般的です。
例えば赤字の事業ドメインにリソースを割くのか、撤退するのかなどの指針も打ち出します。
中期経営計画のメリット
中期経営計画の主なメリットを4つご紹介します。
①自社の現状と理想を整理できる
中期経営計画を作成することで、自社の現状(As Is)と理想(To Be)を整理できます。整理することで、後述するその他のメリットに繋がります。
現状と理想を整理するためには、内部環境と外部環境の両方を調査する必要があります。
内部環境を把握できれば、採用計画の練り直しや自社の強みと弱みの分析に繋げられます。
一方で外部環境を把握できれば、ビジネスチャンスの機会を捉えられると同時に、海外からの低価格商品の流入など、ビジネスリスクの分析が可能になります。
②課題を特定できる
中期経営計画の作成を進めていくことで、現状と理想のギャップから課題を特定できます。
例えば、特定できる課題としては「人員の調達」や「特定事業の撤退」などが挙げられます。
中期経営計画の作成過程で具体的な数値も明確になるため、数値を根拠として関係者に報告や説得が可能になり、現場への落とし込みもスムーズに進みやすくなります。
③経営層と従業員の間で共通認識ができる
中期経営計画を作成することで、経営層と従業員の間で共通認識が生まれ、従業員のモチベーション向上につながります。
中期経営計画を見れば誰でも経営者目線で会社を見ることができるため、現場の社員も自ら考えて積極的に行動しやすくなります。
共通の目標、共通の目標達成プロセスがあるかどうかは、組織の生産効率を高める重要な要素です。共通認識の不足によってトラブルが生じている企業は、中期経営計画を活用して目線と認識を合わせることから始めると良いでしょう。
④社外の信頼を獲得できる
中期経営計画を公開することで、株主や外部パートナーからの信頼を獲得できます。
本稿の後半部分でも紹介しますが、上場企業の多くは中期経営計画を一般公開しています。これは信用を獲得することによって融資を受けやすくなったり、取引に応じてもらいやすくなったりするからです。
中期経営計画の作り方・手順
中期経営計画の作成手順は以下の通りです。
- 経営理念(MVM)の明確化
- 市場・環境の調査
- 経営戦略の立案
- KGI・KPIの設定
- 行動計画の策定
- モニタリング環境の整備
それぞれ詳しく解説します。
①経営理念(VMV)の明確化
まず、企業活動の土台となる経営理念(Vision・Mission・Value)を明確にします。
Vision | 企業が目指したい企業自身あるいは社会の理想像。 |
---|---|
Mission | Visionを実現するための使命、課題。 |
Value | Vision、Missionの実現において大切にしたい企業独自の価値観。 |
上記のVMVは経営戦略や事業戦略の上位概念です。そのため中期経営計画を作成する場合もVMVが土台となります。
VMVが明確になっていないまま中期経営計画を作ったとしても、企業としての在り方についてステークホルダー間で共通認識を得られていないため、事業運営中にさまざまなトラブルが発生する可能性が高まります。
したがって、中期経営計画を作成する前に必ずVMVを明確にしましょう。
②市場・環境の調査
VMVが定まったら、自社を取り巻く市場(ビジネス環境)を調査します。この調査では「PEST分析」や「3C分析」などのフレームワークが役に立ちます。
PEST分析で政治・経済・社会・技術という4つの側面から自社のビジネスに影響を及ぼす因子を特定し、3C分析で自社の現状や課題、顧客のニーズや市場のトレンド、競合の動向やシェアなどを調査します。
③経営戦略の立案
経営理念や市場環境などの前提条件を整理し終えたこのタイミングで、ようやく
具体的な経営戦略の立案を始めます。
経営戦略の立案では、以下のようなフレームワークが役に立ちます。
- SWOT分析
- バリューチェーン分析
- ビジネスモデルキャンバス など
例えば「選択と集中」という戦略を検討する場合は、上記のようなフレームワークを活用しながら自社の状況(強みや弱みなど)を把握し、どの事業から撤退し、どの事業にリソースを集中させるのかを決めていきます。
④KGI・KPIの設定
経営戦略が策定できたら、計画の目標(KGI・KPI)を具体的な数値に落とし込みます。
このタイミングで、事業セグメントごとのKGI(売上や利益)とそれらに紐づくKPI(活動による先行/遅行指標)を設定します。
これらの目標は「数値」だけ決めても意味がないので「達成時期」とセットで計画を立てます。この達成時期次第で⑤の行動計画が大きく変わります。
⑤行動計画の策定
KGIとKPIを達成するための具体的な行動計画を決めます。
KGIとKPIは「数値」と「達成時期」のセットで設定しますが、行動計画は「アクション」と「納期」のセットで設定します。
ただし上記2つは必須要件であって、十分要件ではありません。確実に行動計画を履行していくためにはアクションの「開始日時」と「想定工数」も必要です。これらがなければ現実的なスケジュールを立てられないからです。
「想定工数」の見積もり方法はさまざまで、具体的には以下のようなものが挙げられます。
- 類推見積り
- パラメトリック見積り
- 三点見積り
- ボトムアップ見積り
- ファンクションポイント法
非現実的な納期を設定することのないよう、十分に注意しましょう。
⑥モニタリング環境の整備
成果やその進捗がわかるように、効果測定ができる環境を整備します。効果測定ができなければ結果の原因を分析できず、改善につなげることができないからです。
デジタル化が進む前までは、毎朝のミーティングなどでアナログ的に進捗の共有が行われていました。
しかし昨今では、活動履歴も含めたさまざまなデータをBIツールでダッシュボード化したり、標準進捗より遅れているものはアラートを通知する仕組みを用意したりする企業が増えています。
モニタリング環境の整備でお困りの場合は、BIツールの導入も検討すると良いでしょう。
中期経営計画の事例
中期経営計画の実際の事例をご紹介します。
事例①:安川電機
2019年6月6日に公開された安川電機の中期経営計画「Challenge 25」をご覧ください。
中期経営計画「Challenge 25」 (2019~2021年度)
安川電機の中期経営計画では、①前中期経営計画の振り返り、②財務目標と基本方針、③経営基盤の強化、という3つのポイントについて詳しく解説しています。
前回の振り返りを踏まえて次の5年間で何を目指すのか、その上で何を改善する必要があるのかが定量的にも定性的にも明確になっているため、株主や取引先からの信用を得やすいでしょう。
事例②:三井物産
2020年5月1日に公開された三井物産の「中期経営計画2023〜変革と成長〜」をご覧ください。
三井物産の中期経営計画では、以下の5部構成になっています。
- 三井物産の目指すあり姿
- 中期経営計画2023 Corporate Strategy
- 定量目標
- 株主還元方針
- 新Mission Vision Values
安川電気と同様に、前中期経営計画の振り返りと今後の経営戦略が詳細に解説されています。
一方で安川電機と異なる内容も含まれています。「株主還元方針」と「新Mission Vision Values」です。株主からの信用獲得と、経営計画の妥当性や根拠を伝えることも今回の発表で重要と捉えたのでしょう。
このように一口に「中期経営計画」と言っても、企業によって発表する内容は異なります。今後作成予定の読者様は、目的と課題にあわせて適切な内容になるよう工夫しましょう。
中期経営計画の作成時に注意すべきポイント
中期経営計画の作成時に注意すべき3つのポイントをご紹介します。
経営理念や長期経営計画から逆算する
中期経営計画は、その上段にある長期経営計画や前提になっている経営理念から逆算することが重要です。
なぜなら、長期経営計画や経営理念を無視した中期経営計画ではステークホルダーから信用を得られず、中期経営計画策定の目的を達成できないからです。
昨今は凄まじい速度で市場環境が変化しているため、5〜10年単位の長期経営計画を立てるのが難しいと感じるかもしれません。
もし長期経営計画は作らないと判断するのであれば、少なくとも経営理念(Mission・Vision・Value)をベースにした中期経営計画になるように最低限担保しましょう。
計画を可視化する
中期経営計画はドキュメントに落としこみ、常に経営層と現場が確認できる状態にすることが大切です。
ドキュメントはテキストだけではなく、グラフや図などを用いることで従業員の理解を促せます。また先述の通り、進捗状況をリアルタイムに確認できるダッシュボードがあるとより良いでしょう。
予材管理を行う
中期経営計画の実現可能性を高めるために、予材管理を行うのも一つの方法です。
予材管理とは、目標の2倍の営業材料(リソースのバッファ)を用意しておくことです。こうすることで目標未達リスクを回避できます。
例えば、売上を10億円から20億円に伸ばす目標を設定する場合、10億円達成時の人的リソースから4倍に増やすための行動計画を立てることになります。
人的リソースを4倍に増やすためには、採用候補者がいるコミュニティの開拓(母集団形成)や新規参入者の教育環境の整備など、抜本的な改革が必要になるでしょう。
このように、営業材料を目標の2倍用意するのは生半可なことではありません。しかし「元々無理な計画だから」と管理強度を弱めると予材管理の意味を成しません。
予材管理をするのであれば、2倍の営業材料を確保するための行動計画とその履行が重要であることを覚えておきましょう。
まとめ
中期経営計画は、事業の安定化や成長に必要不可欠です。移り変わりの早いこの時代において、最も重要な計画と言っても過言ではありません。
そのため、中期経営計画のようなビジネスの上流をデザインできる人材は希少価値が高いです。
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