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2022.3.2
ERP導入による企業のメリットとは?導入方法や失敗しないためのポイントも解説!
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ERPは個々に管理されている社内データを統合・管理できるもので、規模を問わず多くの企業で導入が検討されています。
需要が高まっている今、ERPを導入することで何がどう変わっていくのかわからないという人も多いはずです。
今回は、ERP導入による企業のメリットについて紹介しながら、具体的な導入方法や失敗しないために知っておきたいポイントを解説していきます。ERPのことを知りたい人はもちろん、これからERP導入を検討する企業の人も、ぜひチェックしてみてください。
ERPとは?
ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略語で、経営資産計画を指す言葉です。
シンプルに言えば、ERPというITシステムの導入で業務間の連携がスムーズになり社内業務を効率化できるようになります。
具体的には「顧客管理」「財務会計管理」「経営支援」「マーケティング管理」などが代表的です。
財務、人材、商品、流通など個々の分野では優れた機能があったとしても、連携部分が脆弱では情報交換やデータ加工に多大な労力がかかってしまうでしょう。
ERPを導入すれば、これらの企業内資源が一元的に管理できるようになります。
ERPとは何かについては以下の記事で詳しく解説しています。
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基幹システムとERPの違いは何?ERPに切り替えるメリットや導入形態についても紹介!
ERP導入によるメリット
ERPを導入するメリットはいくつかありますが、特に大きなものは下記の3つです。
- 業務効率が上がる
- 経営情報が把握しやすい
- セキュリティが強化される
業務効率が上がる
ERPを導入すると業務効率が格段に上がります。
情報が一元管理できるようになり、製品の在庫状況や納品予定日などの情報共有が素早くできるようになるからです。
各部門で情報共有され、あらかじめ購買や生産に関して計画が立てられるので、生産や納期など全体フローを効率的に設計することも可能となります。
担当者がゼロから考えなくても、ERPが概要計画を作成したり、発注やメンテナンスのタイミングを示してくれるのです。
経営情報が把握しやすい
ERPの導入で経営情報が把握しやすくなります。
多くのERPパッケージに経営分析機能が搭載されており、現在の資産情報から売上、人材活用情報に至る部分まであらゆる情報が手に入るからです。
ただし分析機能はERPの製品によって異なります。そのため自社にとって必要な分析ができるものを選ぶことが大切です。
セキュリティが強化される
ERP導入でセキュリティが強化されます。
社内システムを組み合わせることにより、セキュリティも一元化されるからです。
企業の情報漏洩やハッキングのリスクを防ぐだけでも、ERPを導入するメリットは非常に大きいと言えるでしょう。
しかし近年はERPを狙ったハッカーも存在しているので注意が必要です。
機密性の高い情報を暗号化する機能を備えたERPがあるので、セキュリティを強化するならそちらを導入すると良いでしょう。
ERP導入によるデメリット
メリットがある一方でERPを導入するデメリットはどのようなことがあるか、次の3点について見ていきましょう。
- 導入コストがかかる
- 導入には知識が必要
- データ整理が必要
導入コストがかかる
ERPには、さまざまな場面で導入コストがかかります。
導入・保守・運用の各フェーズでコストが発生するほか、導入後もサーバーやネットワークの管理による人件費が発生します。
取り扱う製品によってはカスタマイズ費用が別途発生することもあります。そのため、ERP導入はコストがかかることを事前に知っておいた方が良いでしょう。
特に大企業をはじめとする管理対象の大きな組織においては、パッケージのカスタマイズは必須です。外部の有識者やコンサルタントの力を借りながら、導入前のコスト・メリット分析やFit-Gap分析に投資しましょう。
導入には知識が必要
ERPの導入は成功すればメリットが大きい一方で、導入の難易度が高く、思った通りの結果が得られないことが多い領域です。その理由は、業務とシステム両方に対する深い知識が必要だからです。特に業務については、部門横断的な知識の集約が求められます。
部門ごとの部分最適を目的に使用されていたシステムやツールからERPに移行することで、データは一元管理され、部門を跨いだ連携が実現されます。そのためには、既存システムのデータ構造やシステム要件、その背景にある業務特性を総合的に理解していることが肝心です。
また、導入するERPのデフォルト機能やカスタマイズの許容範囲についても、前提知識があれば手戻りのリスクが軽減されるためなお良いです。
導入には知識が必要と言っても、組織や企業の規模によっては、会社全体のデータの流れや資産や設備を把握し切っている人がいることの方が稀です。もし、そのような規模であれば敢えてERPを導入しようとは思わないでしょう。ERPは大きな組織、大きな企業ほど活用のチャンスがあります。
ただし、知識が未熟な状態の社員だけに、いきなりERP管理者を任せるのはギャンブルです。外部から経験者を雇い、各部門から有識者を選抜し、ERP導入プロジェクトを発足させるのが良いでしょう。
データ整理が必要
ERPを導入するとなったら、まずはデータ整理が必要になります。
なぜなら、ERPの導入前は、各部門がそれぞれに異なる方法で情報を取り扱っていることが多いからです。
例えば、日付にしても、部門ごとに桁数やデータ型が異なり、そのまま統合することができないと言ったケースはよくあります。各部門のデータにばらつきがある状態でERPを導入しても、経営の意思決定をするスピードは上げられず、かえって逆効果になることもあります。
そのためERPでデータを一元化する際は、各部門で散逸しているデータを整理した上でERPに登録しなければいけません。
すぐに導入を進めるのではなく、データを整理するための方法を各部門に周知しておく必要があります。
ERP導入にかかるコスト
ERP導入にかかるコストはどのようなものがあるのか、各相場とともに紹介します。
ERPにはクラウド型とオンプレミス型の2種類があり、それぞれライセンス価格、導入費、開発費で構成されているのが特徴です。
クラウド型 | オンプレミス型 | |
---|---|---|
ライセンス | 基本ライセンス:1~100万円
ユーザーライセンス:1,000円~1万円 |
基本ライセンス:100~1,000万円 |
導入費 | 基本的に発生しない | 基本導入費用:10~1,000万円
導入サポート費用:1,000~2,000万円 教育費用:10~100万円 |
開発費 | 基本的に発生しない | カスタマイズ、拡張機能により変動(100~1,000万円程度) |
出典:ERPの価格や導入費用|クラウドとオンプレミスの価格の違いを解説|ITトレンド
クラウド型は費用が安く、なかには10万円以下で導入できる製品もありますが、利用量や利用人数によって費用が発生します。
一方オンプレミス型だと、導入費や開発費の面でクラウド型より割高になることがありますが、ランニングコストがかからない点がメリットです。
どちらにもメリット、デメリットはあるため、企業規模や利用人数も考慮しながら選ぶようにしましょう。
ERP導入の手順
実際にERPを導入する手順を、下記5つの順番で解説します。
- 製品を選ぶ
- 契約する
- 初期設定を行う
- 要件定義する
- 社内教育を行う
製品を選ぶ
まずは自社にとって最適なERPパッケージを選びましょう。
ERPの知識がない場合、ベンダー選定をしたのち相談しながら商品選定するのが一般的です。導入検討段階でコンサルを雇っている場合は、候補となる製品のリストを作成してもらうのが良いでしょう。
ベンダー候補の選定後は、導入目的などを明記したRFI(情報提供依頼)を発行し、製品カタログやパンフレット、事例集などをベンダーに請求しましょう。
スモールスタートする場合や、中規模の組織であれば、外部の人間に頼らず内製だけでプロジェクトを推進することも多いでしょう。その場合の情報収集は、ERPの比較サイトが便利です。
製品概要やユースケースを調べ、比較・検討することで、自社にとって使いやすい製品かどうかを検討します。ERPは適用範囲が大きくなるにつれて、パッケージのデフォルト機能だけでまかなえることが難しくなるため、製品選定時に、カスタマイズの難易度や自由度、コストについても情報収集しておきましょう。
ERPの製品情報については以下の記事で詳しく解説しています。
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ERPって何?導入のメリットや種類、基幹システムとの違いをわかりやすく解説
【2022年最新版】ERP製品の国内・海外シェアは?市場規模や市場予測も解説
契約する
ERPパッケージベンダーと契約しましょう。
必要に応じてベンダーにプレゼンテーションを依頼するのが重要です。
契約の際は実際の現場を仕切るリーダーやシステム管理者にも選定に立ち会ってもらいましょう。強固なプロジェクト体制ができあがり、ERP導入の成功率を高められます。
初期設定を行う
ERPはユーザーのIDと初期パスワードといったシステムの初期設定が必要です。
それだけでなく、ユーザーや所属グループの権限のほか、不正や障害があった場合の通知機能の設定も行う必要があります。
またセキュリティ面に関して、不正防止や監視に利用するアクセスログの設定など細かい部分も見ていかなければなりません。
要件定義する
業務を変更するもの、しないものを洗い出し要件定義しましょう。
ERPを導入すると従来の業務に何かしらの影響があるため、要件定義することが重要になります。
要件定義とはシステム開発などのプロジェクトを始める前の段階で、必要な機能や要求をわかりやすくまとめていく作業のことを指します。
個人情報保護ポリシーや情報セキュリティポリシーなどの改定の必要性についても検討しなくてはならず、ISO関連規定の見直しが必要となるでしょう。
一般的に国産のERP製品は、日本の商習慣に合わせた標準機能が搭載されているので使いやすいのが特徴です。
社内教育を行う
ERP導入に関して、社内教育をするようにしましょう。
ERP導入により業務が大きく変更される可能性があるため、社員ひとり一人にERPで何が変わるのかを説明しなくてはいけません。
ERPの内容に応じて説明会や研修、eラーニングを実施しましょう。
社内教育では、内部統制や個人保護方針といった情報セキュリティのリスクについても徹底するのがポイントです。
ERP導入にかかる期間・スケジュール
ERP導入にかかる期間・スケジュールに関しては企業規模や事業内容によって異なります。またカスタマイズが必要かどうかで変動する場合もあるでしょう。
とはいえいずれの企業であっても、ERPを導入するなら最低でも3ヶ月以上の期間は必要なことが多いです。
要件定義に1〜2ヶ月、カスタマイズや代替案、業務改善策の作成も1〜2ヶ月、社内教育も最低でも約1ヶ月かかります。
1億円規模を導入する場合だと、12〜19ヶ月程度かかることもあります。
ERPは即導入できるものではないということは、知っておいた方が良いでしょう。
ERP導入に必要な工程
ERP導入に必要な工程は次のとおりです。
- 導入前に業務を棚卸しする
- 目的を明確にする
- 費用と予算のバランスを考える
- 現場のコミュニケーションを強化する
これらのポイントを押さえ、導入してかえって業務効率が下がらないようにしましょう。
導入前に業務を棚卸しする
ベンダー選定前、ERP導入前には業務の棚卸しが求められます。事前に棚卸しすることで、従来どのようなツールで業務運営していたかを確認できるようになるからです。
まずはERP導入の前に、自分たちで現状の業務を整理しておくと、ベンダーから具体的な提案が聞けます。業務マニュアルの最新化や、業務フロー図の作成、組織図、外部組織とのインターフェース、簡易的なデータ相関図などがあると建設的な議論ができます。
目的を明確にする
ERPを導入する目的を明確にしましょう。
目的を明確にすることで、自社にとって優先度の高いERPの機能が明確になり、現実的で効率的な投資計画や移行計画を立てることにつながります。
「ERPが良い」という情報だけで、自社にとって使い勝手の悪い機能ばかりが備わった製品を導入してしまった場合、拡張性がなく、組織横断的な利用の支障となり、投資対効果を得られない可能性があります。
目的の大きさはここでは問われません。ERPの導入を検討する以上、単一組織でのプロジェクトではなく、複数組織を跨いだプロジェクトになることが想定されるため、複数組織の観点や視点から、自社に必要な機能や適用範囲を検討し、最適なソフト利用を検討することになります。
それぞれの組織ごとに解決したい課題や達成したい目的もあるでしょう。さらにその先に、企業全体として解決したい課題や達成したい目的があるはずです。
プロジェクトが空中分解せずに、ブレずに突き進むためには、大小それぞれの目的をお互いが共有し、お互いに尊重できるようにすることが重要です。そのために、目的は明確にしておくのに限ります。
費用と予算のバランスを考える
ERP導入にかかる費用と自社の予算のバランスを考えましょう。
先述のとおり、ERPにはオンプレミス型とクラウド型の2種類があります。
オンプレミス型は、自社サーバーでシステム管理を担うERPパッケージで情報漏洩のリスクが低いメリットがありますが、導入のコストが高いのがデメリットです。
一方クラウド型は、インターネット上でシステム管理を担うERP導入コストの低さは魅力ですが、セキュリティ面が弱く回線が不安定なことがあります。
自社の予算でどちらがベストなのか、中長期的な目線で判断しましょう。
現場のコミュニケーションを強化する
導入にあたって現場のコミュニケーションを強化しましょう。
ERPが導入されると業務内容に大幅な変更が生じるようになり、現場が混乱してしまう可能性があるからです。
まずは経営者がプロジェクトの状況を把握し、情報共有しなければいけません。
そして経営企画部門、営業部門、製造部門、経理部門など各部門を横断したプロジェクトチームの立ち上げが必要なので、部門同士のコミュニケーションは必須と言えるでしょう。
ERP導入には視野と顔が広く人望の厚いプロジェクトメンバーを参画させることと、大勢のステークホルダを束ねることができるプロジェクトリーダーを選出できるかが重要な要素のひとつです。
ERPを導入して失敗するパターン
ERPを導入しても失敗するパターンを紹介します。
- プロジェクトリーダーが不在
- ベンダーに依存している
- 製品の知識が足りていない
プロジェクトリーダーが不在
プロジェクトリーダーがいなければ失敗する可能性が高くなります。
ERPは導入をめぐりスタッフの反発が起きやすいので、プロジェクトをまとめるリーダーが必要不可欠です。
ERPのプロジェクトリーダーは、知識と熱意を持った人物を選定するようにしましょう。
ベンダーに依存している
ベンダーに任せっきりにすると、ERP導入は上手くいかないことが多いです。
実際にERPを構築するのはベンダーではなく自社であるため、全てをベンダーに任せていると、導入時に業務プロセスが改善されない可能性があります。
そのためベンダーとは入念に打ち合わせをして、導入に関して情報共有を密にすることが大切です。
ベンダーは外部の人間であることを念頭に置き、導入を経てどのように業務に活かしていくのかという企業側のマインドが必要不可欠と言えるでしょう。
製品の知識が足りていない
ERP導入は企業や社員ひとり一人も、ある程度の製品知識がなければ失敗します。
ベンダーはERPの専門家であるため専門性が高いですが、隅々まで完璧に理解できていることは稀です。個々がERP導入で自社にどのような影響を及ぼすのか知っておく必要があります。
企業側もある程度の知識を持っていなければ、業務プロセスとのマッチングを判断できなくなってしまいます。
ERPコンサルタントの果たす役割とは
導入時のポイントでも触れたように、ERP導入には、ERP導入コンサルタントの力も役に立つ場面が多いです。
ERP導入コンサルタントの活用は、経営資産の客観的な把握やITシステムの専門知識の周知ができるようになるといったメリットがあります。
ERPを専門とするコンサルタントは、それぞれ得意な業界を持っていることがほとんどなので、契約前に過去のキャリアを確認しましょう。業界ごとに癖やミスが起こりやすいポイントには傾向があるため、コンサルタントから情報を得ることで手戻りリスクを軽減させることが期待できます。
また、外部からコンサルタントが入ることで、企業が自身では気づけていない潜在的な経営課題に気づけたり、市場のトレンドを意識することができるようになります。そのため、より本質的なERP活用ができるチャンスが得られます。
大手ERPコンサルティングファームの中では、ドイツのSAP社が製品と共に有名です。その他には、IBM、アクセンチュア、デロイトトーマツといった外資系企業にNRIやNTTデータ、富士通などの日系IT企業にERPコンサルティング担当部署があります。
ERPコンサルタントについては以下の記事で詳しく解説しています。
▼関連記事
ERPコンサルタントの仕事内容とは?必要な資格や年収相場についても解説!
まとめ
ERPはあらゆる社内の情報を一元管理できるようになり、業務効率改善につながるものです。導入すれば多くのメリットが受けられ、働きやすさにもつながるでしょう。
とはいえ、導入には多大なコストや期間が必要となります。リスクも踏まえて、正しい手順、必要な工程を経営者自身が理解しておくことが重要です。
また、今後ERPコンサルタントの需要もますます増加する傾向にあります。
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