コンサル基礎力
2020.6.6
外資系戦略コンサルの適切な資料作成術: PowerPoint vs Word
Amazon・Facebook・Linkdin・TOYOTAなどでPowerPoint型のスライド廃止が増えている中ではあるが、一方でほとんど企業ではスライドでの報告書作成が残念ながら無意識の常識になっている。
当たり前の話だが情報伝達がそもそもの目的である以上、スライドや文章 (Wordなど)にはそれぞれ長短から来る使い分けが生じる。
そのため、禁止云々はポジショントークの色が強く、実態として優良企業内では適切な使い分けをしている。
例えば、Amazonでは社外向けは当然動画やスライドが中心、社内でも一部スライドが使われている。当然他企業よりは使用頻度は低い。
本稿では、上記の正しい判断を支える適切な資料作成術を示す。
投稿者略歴
- フリーランス歴: 4年
- 元外資系の戦略コンサルタント: 5年
- 元AIエンジニア: 1年
前提
以下を対象者とした記述とする。
・企業における上申資料や企画資料の作成者
・フリーランスを含むコンサルタント
以下は対象外とする
・文章やスライドのデザイン構成
・文章自体の書き方や表現単語の選定
伝達対象者毎の最適な資料作成手段
資料作成自体の目的は、①自己の持論整理と②持論の伝達の2つである。
②の場合、伝達対象者に応じて資料作成手段を最適化していく必要があるため、その概要を以下に示す。
伝達対象者 | 資料作成手段 | 作成上の制約 |
---|---|---|
自分自身 | ノート・メモ (非構造な文章) | 持論構築に十分な整理ができるのであれば、制約はない (≒非構造) |
情報背景を理解している人 | Wordなど (構造化文章) | 新しく伝達すべき部分については、 “文章の構造化”を行う必要がある |
情報背景を知らないが、業界事情は理解している人 | PowerPointなど (構造的な静止画) | 文章の構造化だけでなく、”視認性を意識した構造化”を行う必要がある |
情報背景・業界事情を知らないが、論理思考の強い人 | インフォグラフィック(連続性を重視した構造的な静止画) | 上記に加え、”連続的な視認性”を意識した構造化を行う必要がある |
情報背景・業界事情を知らないが、論理思考の弱い人 | 動画 | 上記に加え、”立体的な視認性”を意識した構造化を行う必要がある |
情報伝達のプロである”広告”からの学び
上述の表の理解を補足するために、情報伝達が至上命題である”広告”を例として見る。ただ前提として、以下のようにいくつか大きな差異はある。
・広告: 無関心な人も対象に含まれ膨大な人数を対象
・資料作成: 関心のある人でかつ限定された人数を対象
但し、”時間当たりの情報量の多さ”という観点では概ね同一であると言える。
故にシンプルに言い換えると、時間当たりにどの程度の情報量を伝達したいかで最適な手段が異なる。
広告提示手段 | 時間当たりの 情報量の多さ |
相当する資料作成手段 |
---|---|---|
SEOでの文章広告 | ★ | Word |
スマホでの画像広告 | ★★ | PowerPoint |
インフォグラフィック広告 | ★★★ | インフォグラフィック |
CM/Youtubeでの動画広告 | ★★★★ | 動画 |
シーン別の実用的な使い分け事例
Wordなどの構造的な文章で、情報伝達を行うべき対象者
(自分の持論に関する情報背景を理解している人)
→社内外の近しい関係者には最適
- 同部門/チームのメンバー、及びその直属管理者
- 他部門の同プロジェクトメンバー、及びその直属管理者
- 社外の同プロジェクトメンバー、及びその直属管理者
PowerPointなどの構造的な静止画で、情報伝達を行うべき対象者
(情報背景を知らないが、業界事情は理解している人)
→上記の更に上の管理者、及び提案/契約中のクライアントには最適
- 提案/契約交渉中のクライアント
- 同部門/チームのメンバーにおける直属管理者の更に上の管理者
- 他部門の同プロジェクトメンバーにおける直属管理者の更に上の管理者
- 社外の同プロジェクトメンバーにおける直属管理者更に上の管理者
インフォグラフィックなどの連続性を重視した構造的な静止画で、情報伝達を行うべき対象者
(情報背景・業界事情を知らないが、論理思考の強い人)
→よく新規事業の役員上申などで使われるケースがあり最適な使い方
- 現場理解の薄いクライアントの上席(役員以上)
動画で、情報伝達を行うべき対象者
(情報背景・業界事情を知らないが、論理思考の弱い人)
→AI・ブロックチェーンなどの技術関連事項の上申などで、かつ役員以上が食わず嫌い思想である場合に最適な使い方
- 現場理解の薄く、食わず嫌い志向のクライアントの上席(役員以上)
参考資料
- N/A