コンサルキャリア
2021.11.8
戦略コンサルタントは激務?繁忙期の有無や激務の理由を徹底解説!
戦略コンサルタントを志している人の中には、働き方がハードであることを聞いて本当に自分に務まるか不安に感じている人もいるでしょう。
結論からお伝えすると、戦略コンサルタントは他のコンサルタントよりも激務と言えます。
しかし、働き方改革などの政策により戦略コンサルタントの働き方も徐々に改善されているため、この記事をお読みの方が認識している「激務の程度」とは大きな違いがあるかもしれません。
そこで本稿では「激務」の基準をお伝えするとともに、近年の戦略コンサルタントの勤務状況や激務になる理由について解説します。
「激務」の基準
そもそも「激務」とはどのような状況なのでしょうか。本稿では以下のように基準を設けた上で解説します。
月80時間以上の残業が発生しているか
月80時間以上の時間外・休日労働は一つの「激務」の基準です。
厚生労働省の発表によると、以下のいずれかの条件を満たす場合に脳や心臓疾患の発症と労働時間の関連性が非常に強いと評価されています。
- 異常な出来事:発症直前から前日までの間において発生状態を時間及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと
- 短期間の過重業務:発症前おおむね1週間の間にとくに過重な業務に就労したこと
- 長期間の過重業務:発症前長期間にわたって著しい疲労を蓄積する過重労働をしたこと(発症前1ヶ月の間に100時間、または2〜6ヶ月間に月平均で80時間を超える時間外労働。月45時間越えて長くなるほど脳・心臓疾患とに関連性が強まる。)
上記のことから、月間残業80時間がいわゆる「過労死ライン」と言われています。
健康障害リスクが高いとされている残業時間を超えた労働は「激務」と言えるでしょう。
参照:厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定」
労使協定を超える残業が発生しているか
労使協定で定められた残業時間を超えているかどうかも一つの判断基準です。
労働基準法で定められている法定労働時間は「1日8時間、1週間で40時間以内」と定められています。
しかし、企業が労働基準法36条にもとづいて労使協定を締結している場合は、法定労働時間を超えて社員に残業させることができます。
これがいわゆる「36(サブロク)協定」と呼ばれるもので、36協定は労使協定の1種です。
なお36協定を締結した場合でも、残業時間は以下のように上限が定められています。
- 1ヶ月当たりの時間外・休日労働時間:45時間未満
- 1年当たりの時間外・休日労働時間:360時間未満
また、臨時的かつ特別な事情によって残業が必要な場合でも、労使が合意した上で以下の上限を超えてはいけません。
- 1ヶ月当たりの時間外・休日労働時間:100時間未満
- 1年当たりの時間外・休日労働時間:720時間未満
- 2〜6ヶ月間平均の時間外・休日労働時間:80時間未満
36協定によって定められた残業時間を超えて残業した(させた)場合、労働基準法32条の違反となり、企業および企業の労務管理責任者が罰則の対象となります。
したがって、36協定を締結している企業に勤務する方もそうでない方も、上記残業時間を超えている場合は「激務」に該当すると考えて良いでしょう。
参照:厚生労働省「36協定で定める時間外労働及び休日労働 について留意すべき事項に関する指針 (労働基準法)」
業務外の拘束時間が長い
一般的には業務時間のみを残業時間としてカウントしますが、飲み会やゴルフコンペなどの付き合いにかかる時間も「激務」かどうかの判断基準になります。
とくにコンサルタントのような客先常駐が必要な職種や営業職などは、顧客との関係値作りのため業務時間外での接待を命じられることが珍しくありません。
しかし、企業によっては接待も勤務時間に含めるよう指示を受けますが、中にはサービス残業扱いの企業もあります。
もし後者のような企業において、接待時間を含めた時間外労働時間が先述した「過労死ライン」や「36協定」で定められた時間外労働時間を超えている場合は「激務」と言って差し支えないでしょう。
戦略コンサルタントは本当に激務か
戦略コンサルタントは、その他のコンサルタントと比較すると激務になりやすい傾向にあります。
その理由と時期についての詳細は後述しますが、一時的に労使協定で定められている残業時間を超えることは頻繁にあります。
近年では「働き方改革」によって残業に関するルールとその履行が厳格化されていますが、戦略コンサルタントが担う責務をまっとうするためには、ハードな働き方をしなければいけません。
つまり、よく耳にするような「毎日終電で帰っている」「終電を逃すのが当たり前、深夜2〜3時にタクシーで帰る」などは、時期によっては現実にあるということです。
では、どのようなタイミングと理由によって激務になるのでしょうか。次章以降で詳しく解説します。
戦略コンサルタントが激務になりやすい時期
戦略コンサルタントが激務になりやすい時期は大きく2つです。
プロジェクト序盤
プロジェクト序盤は「要件定義」や「計画設計」などプロジェクトの非常に重要なフェーズを迅速に進める必要があるため、激務になりやすいです。
要件定義や計画設計を進めるためには、クライアントの業界知識や業務知識を適切に把握する必要があり、時間が無い中で大量のインプットを求められます。
戦略コンサルティング案件は1プロジェクトあたりの参画人数が他のシステム開発系案件よりも圧倒的に少ないため、1人のコンサルタントが担う業務範囲も大きく、細かく役割分担してインプットすることができません。
このように大量のインプットとともに、付加価値の高い最終的なアウトプットを生むための計画を進めなければならないため、プロジェクト序盤はハードに働かなければいけません。
プロジェクト終盤
プロジェクト終盤においては、ドキュメント作成およびそのブラッシュアップ、プレゼンテーションの準備、ステークホルダーとの最終確認などを迅速かつ正確に行う必要があるため、激務になりやすいです。
納品物によってプロジェクトに対する評価が決められるため、少しでもコンサルタントの付加価値を生み出そうと納期ギリギリ(当日の朝)まで資料の修正を行うことがほとんどです。
また、少しでもクライアントが納得感を得られるように、最終プレゼンテーション前にアウトプットの内容を重要なステークホルダーと擦り合わせておく必要があります。
そのために業務時間内の調整はもちろん、業務時間以外に飲み会やゴルフコンペなどを開催し、その場で競合他社の取り組み状況やアウトプットの方針にズレが無いか確認することもあります。
世間一般的には「クレバーなコンサルタントは泥臭いことはしない」とイメージされていますが、優秀なコンサルタントほど寝技のような泥臭いことも地道に行います。その地道さや泥臭さが付加価値につながることを知っているからです。
戦略コンサルタントの仕事内容などを知りたい方は、以下もあわせてご覧ください。
戦略コンサルタントとは?仕事内容・年収・必要なスキル・未経験からなる方法を徹底解説!
戦略コンサルタントが激務になりやすい理由
そもそも、なぜ戦略コンサルタントは激務になりやすいのでしょうか。その理由を解説します。
知的集約型産業のため
戦略コンサルティングを含むコンサルティング業は、いわゆる知的集約型産業(≒労働集約型産業)のため激務になりやすいです。
知的集約型産業とは労働集約型産業の一つで、労働者の知的生産への依存度が高いビジネスのことを指します。知的生産において「正解」はなく、常に「より良い解」を導き出すために働く必要があります。
実際、コンサルティングの現場では「Which one is the better?(どっちの方が良いのか?)」という会話が頻繁に行われます。契約期間中はより良い提案を追い求める続ける日々となるため、自然と長時間労働になりやすいです。
プロジェクト期間が短いため
戦略コンサルティングの案件は、システム開発を含むようなその他のコンサルティング案件と比較してプロジェクト期間が短いです。
しかし、期間が短い分だけ期待されるアウトプットの品質が低くなることはなく、戦略コンサルタントに求められるアウトプットの品質は常に高いです。
また、当然ですが競合他社の存在にも目を配る必要があります。短い期間で同業他社よりも優れた提案やアウトプットを生み出し続けなければ、リピートされない可能性が高くなります。
じっくりゆとりを持って成果物を作り上げるのではなく、限られた期間内に集中的に労働し、最上のアウトプットを作り上げるため、精神的な負荷も身体的負荷も大きくなります。
常に学習する必要があるため
戦略コンサルタントは良質なアウトプットをするために、常に学習する必要があります。
業務時間内に学習することも可能ですが、それだけでは時間が足りないことがほとんどのため、土日祝日返上で勉強します。
必要になる知識はプロジェクトによってさまざまですが、本屋で販売されているような一般的な書籍で入手できないような専門的知識は、最新の論文を読み込んだり、直接有識者にインタビューするなどして習得します。
心理的に拘束されるため
心理的な拘束も激務になりやすい理由に含まれます。
- 経営課題を解決するという難解な仕事
- 高額な報酬を得られる
- 付加価値の高い提言が必要
上記のような職務上の特性から心理的な負荷がかかり、自ら過度な労働を強いてしまう人も多いです。
なお、心理的な拘束や負荷量を「激務」と判断するための数値的な基準はありませんが、厚生労働省の「脳・心臓疾患の労災認定基準」では、極度の緊張、興奮、恐怖、驚くなどの強度の精神的負荷を引き起こす状態や緊急に強度の身体的負荷を強いられる状態などが、精神的な負荷と定義されています。
参照:厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定」
ただし、「激務」と感じるかどうかは、個人のマインドセットやキャパシティによっても大きく変わります。したがって、戦略コンサルタントとして働くことを志す場合は、タフな精神力を身につけておく必要があります。
コンサルティングファーム各社の激務緩和策(働き方改革)
戦略コンサルタントは激務傾向にあることは間違いありませんが、国の働き方改革推進の影響を受けて各社ではさまざまな取り組みを行なっています。
アクセンチュア
アクセンチュアでは「PROJECT PRIDE」という考え方のもと、働き方改革に取り組んでいます。具体的な施策は以下の通りです。
- 有給取得率や残業時間など社員の勤務状況を見える化
- 毎月の経営会議で「個人別労働時間の実績・予測レポート」を基に議論
- 在宅勤務制度の全社展開
- フレックスタイム制度の導入
- 短日短時間制度の導入
- 生産性の高い社員をより賞賛するための給与改定 など
上記のような各種施策によって、生産性の向上による労働時間の短縮をし、十人十色のキャリア像を実現できる環境を提供しようとしています。
PROJECT PRIDEの効果は徐々に出ており、実績ベースで激務が緩和されていることが分かります。
【PROJECT PRIDEによる効果】
- 残業減少(1人あたり1日平均1時間に)
- 離職率低下(PROJECT PRIDE以前の約半分に)
- 有給取得率の向上(70%から85%に)
- 女性比率の向上(22.1%から35.6%に)
参照:アクセンチュア独自の働き方改革「Project PRIDE」|アクセンチュア
PwCコンサルティング
PwCコンサルティングでは「柔軟な働き方を実現する制度」を設けています。本制度では以下のような施策を導入しています。
- フレックスタイム
- リモートワーク
- 時短勤務
- 短日勤務
- 夜間コミュニケーションの制限
- 残業時間のモニタリング
- 労務管理研修(管理職向け) など
※PwC Japanグループの法人ごとに利用できる制度は異なります。
アクセンチュアのように、本制度による実績数値は公開されていませんが、コンサルタントの激務を防止するために十分な制度が設けられていることが分かります。
まとめ
戦略コンサルタントはその業務の特性上、基本的に激務傾向にあります。
しかし、国の働き方改革推進に伴い各社改善傾向にあるため、世間一般的にイメージされているような苛烈な労働状況ではない可能性が高いです。
ただし企業によって働き方はまったく異なるため、これから戦略コンサルタントになろうとしている人は、勤務希望企業の各種施策や実際に勤務していた人の口コミなどを参考にすると良いでしょう。
将来的に自分のペースで戦略コンサルタントとして働きたい場合は、フリーランスコンサルタントになることをおすすめします。
フリーランスコンサルタントになれば、業務量や働く場所・時間を自分の意思で決められる上、頑張り次第ではコンサルティングファームに所属するよりも高い報酬を得られます。
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