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2021.12.27
RPAとAIはどこが違う?RPAとAIの連携事例を紹介
IT業界でのRPAとAIの注目度は高まっており、両者の違いについて詳しく理解する必要があります。
また、RPAとAIを組み合わせるとどのような効果があるのか、RPAとAIの連携事例にはどのようなケースがあるのかという点に関しても、十分な理解が求められます。
本稿では、RPAとAIの定義を明確に説明し、両者の違いや組み合わせてできること、連携事例について詳しく解説を行います。
RPAの定義
RPAとは、Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略称です。
従来人間のみが対応可能と想定されていた作業やより高度な作業を人間に代わって実施できるルールエンジンやAI、機械学習等を含む認知技術を活用して代行・代替する取り組みを指します。
また、RPAは人が操作するユーザーインターフェースを通じて、設定された作業を行います。そのため、大規模な既存システムの変更や業務フローを見直すことなく、既存の業務の効率化を行うことができる点は、RPAの大きなメリットと言えます。
さらに、RPAに業務内容を設定するには専門的なプログラミングは必要ないため、導入のハードルが低いというメリットもあります。
生産労働人口の減少による人材難により、少ない人員で業務を効率良く行うという需要が高まっているため、RPAへのニーズは高まっています。
また、RPAで操作可能な業務が増加し、シナリオ作成が容易になったため、RPAを導入するハードルが下がっています。このような導入のしやすさという点からも、RPAへの注目度は高まっています。
そのため、RPAは、AI(人工知能)やIoTと並ぶ企業ITの最注目キーワードになっています。RPAとAIでは、得意とする領域が異なるため、業務によってRPAとAIを使い分ける、もしくは組み合わせることにより効率化を図るという事例が増えています。
AIの定義
AIとは「Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)」の略で人工知能のことを指します。
人間が行うような知的ふるまいの一部をソフトウェアを用いて人工的に再現したもので、人間のように柔軟なタスクを実行することができます。
あらゆる業界でAIのニーズが高まっており、医療、小売、製造業だけでなくスポーツの分野でも活用が始まっています。
医療では医療画像を用いたAIによる診断サポート、小売であればECサイトのレコメンデーション、製造業であればロボットのキャリブレーションや自己位置認識にAIが活用されています。
なお、AIは機械学習とディープラーニングによる学習を行います。AI自身による、大量のデータ(ビッグデータ)から知識を獲得する機械学習の実用化が進んだため、近年話題となっています。
RPAとAIの違い
RPAとAIの根本的な違いは、自主的な判断をして業務を遂行できるかどうかという点です。
RPAは業務を自動化するシステムそのものであり、決められたルールに従って動きます。一方、AIは人間の代わりにRPAなど他のツールに指示を出すことが可能です。
RPA、AI、botの違いに関して、以下の表にまとめました。
RPA | ・人が行う操作をルールにもとづいて自動的に再現する ・ルーティン作業など、バックオフィス業務の自動化に効果的 |
---|---|
AI | ・大量のデータを分析し、知識を蓄積し学習する機能を持つ ・学習状況から自ら判断し、状況に応じた行動ができる |
BOT | ・人間の会話や行動をシミュレートするコンピュータプログラム ・メッセージツールを通して、人と会話が行えるサービスで利用 |
RPAやBOTは、人間が予め設定したルールにもとづいて、作業を行うという特性があります。
RPAであれば、情報取得や入力作業、検証といった定型的な作業、BOTであればルールにもとづいて設定されたメッセージをユーザーに返すという作業です。
一方、AIは機械学習やビッグデータからの学習状況から自ら判断するという特性があります。なお、AIはあくまでも判断することを得意としており、RPAやBOTのように特定の作業を行うという分野で用いられることは多くありません。
以下では、RPAとAIの対応可能範囲やそれぞれの特性についてより詳しく解説します。
RPAはルーティン作業を行う非自律型
RPAは、データ化されている情報や定型的な業務のみを実行することができる、という特性があります。自主的な判断を行うことができないため、RPAは指示のある業務のみを行う「非自律型」である点を理解しておきましょう。
RPAが適用可能な機能は、以下のとおりです。
- キーボードやマウスなど、パソコン画面操作の自動化
- ディスプレイ画面の文字、図形、色の判別
- 別システムのアプリケーション間のデータの受け渡し
- 社内システムと業務アプリケーションのデータ連携
- 業種、職種などに合わせた柔軟なカスタマイズ
- 条件分岐設定やAIなどによる適切なエラー処理と自動応答
- アプリケーションの起動や終了
- スケジュールの設定と自動実行
- 蓄積されたデータの整理や分析
- プログラミングによらない業務手順の設定
参照:総務省「RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)」
RPAに設定した上記のようなタスクを繰り返し実行できるため、素早く正確にルーティンワークをこなすことが可能です。
そのため、頭脳を使わない手作業のような大量のタスクをこなすことをRPAは得意としています。
なお、RPAは3段階の自動化レベルがあり、現在のRPAは「クラス1」です。各クラスの内容は以下の表のとおりです。
クラス | 主な業務範囲 | 具体的な作業範囲や利用技術 |
---|---|---|
クラス1 RPA(Robotic Process Automation) |
定型業務の自動化 | ・情報取得や入力作業、検証作業などの定型的な作業 |
クラス2 EPA(Enhanced Process Automation) |
一部非定型業務の自動化 | ・RPAとAIの技術を用いることにより非定型作業を自動化 ・自然言語解析、画像解析、音声解析、マシーンラーニングの技術の搭載 ・非構造化データの読み取りや知識ベースの活用も可能 |
クラス3 CA(Cognitive Automation) |
高度な自律化 | ・プロセスの分析や改善、意思決定までを自ら自動化 ・ディープラーニングや自然言語処理 |
出典:総務省「RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)」
RPAの特性については以下でも詳しくご紹介しています。
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RPAとは?注目される背景やメリット・デメリットをわかりやすく解説
AIは自主的に判断して作業を行う自律型
AIは判断や分析などの頭脳労働を担当する頭脳を持ち、状況から判断して自主的な作業を行うため、例外的な処理にも対応できます。
なお、AIは機械学習とディープラーニングを用いて自主的に学習します。
機械学習とは、人間がデータを抽出・分析する範囲を指定し、アルゴリズムにもとづいて情報を分析するAI技術のひとつです。
ディープラーニングとは、AIがデータを抽出・分析する範囲を自動的に指定する、機械学習に含まれる手法のことです。
機械学習とディープラーニングの違いは、学習元となるデータを人間が判断・調整するか、機械が自動的に行うかという技術面での違いがあります。
AIを用いて業務効率をより最適化できるように、業務フローの見直しや改善の提案も可能です。
ただし、機械による自動化は学習データの質が成功のカギを握るため、適切な予測モデルを採用したうえで、データごとに関連性・重みづけをチューニングする必要があります。そのため、適切なモデルを設計できる専門家が必要です。
RPAとAIの組み合わせで実現できること
RPAとAIを組み合わせることにより、手書きの文書や画像などの非構造化データを、AIで構造化データに変換してRPAが読み取れる形にし、人間が行うルーティンワークをRPAで代替することで業務効率化を図ることが可能となります。
RPAとAIの連携は、お互いの苦手分野をカバーし完璧に補完しあうことが可能です。
そのため、RPAにどのような作業を行わせるかをAIに指示させることにより、人間よりもはるかに正確で速い作業を実施することができます。
このように、RPAとAIを組み合わせることで、現在の働き方が一気に変わるといわれています。今後、AIの技術が進歩していけば、高度なRPAも一般的に普及してくると予想されています。
RPAとAIの連携事例
RPAとAIを連携させることにより、さまざまな業務の効率化を実現することが可能です。
現在、Watsonに代表される大規模AIからGoogleが無料で提供するAIまでサービス内容が拡大しつつあります。SaaS型のAIを活用して簡易的な業務改善・効率化を図る企業などもあり、業界や業種を問わず、以下のようなRPAとAIを連携した事例が報告されています。
- 地方公共団体がAIを組み込んだOCRで業務自動化
- クレジットカード会社がチャットボットとAIを組み合わせ申し込みを自動化
- インターネット通販の注文自動化
- 不動産会社がAI×RPAシステムを導入し作業工程を削減
これらの事例について詳しく説明します。
AI-OCRを活用した業務自動化
OCR技術にAIを搭載したAI-OCRを用いて、前後の文字や学習データから文字を連想することにより、従来のOCRに比べより高い精度の文字認識を可能にした足立区の事例です。
足立区では、各種データ入力業務に関して業務改善が可能であるか8か月間検証を行い、定型度の高い業務の場合は1,436時間の削減を見込めるという結果に至りました。
参照:AI-OCR,RPAを活用した業務自動化の検証を行いました(総務省「業務改革モデルプロジェクト」受託事業)|足立区
ウェブ経由のカード申し込みの自動化
RPAで申請者の信用情報の提出を催促し、AIは申請者と会話を続けることにより個人情報の確認を要求するというクレジットカード会社の事例です。
RPAと対話型AIを組み合わせることで、顧客が情報を提供し続けている間に信用度を判断することができるようになり、今まで人が行っていた信用情報確認のプロセスを自動化することに成功しました。さらに、顧客はカード作成までをスピーディーに行えるようになりました。
参照:RPA×AIの組み合わせ・連携事例|AIチャットボット事例|Cognigy(コグニジー)
通販サイトの注文の自動化
通販サイトの注文用チャットボットを用いて、複数のシステム間で注文プロセスを自動化する事例です。
注文からカスタマーサポートまで一連の業務をシステムに任せることで、業務の効率化と顧客の待ち時間の減少を実現しました。
なお、顧客がより自動化しパーソナライズされた顧客体験を求めるようになるにつれ、RPAと対話型AIを組み合わせる需要は高まるでしょう。
参照:RPA×AIの組み合わせ・連携事例|AIチャットボット事例|Cognigy(コグニジー)
大手不動産会社が作業工程を大幅に削減
データを自社の案内資料フォーマットにはめ込む手作業にAI×RPAシステムを導入したところ、年間で25,700時間もの工数削減に成功したという大手不動産会社の事例です。
これにより、単純作業のわりに手間だった業務をする必要がなくなった社員は、以前とは違う仕事に時間を割くことができるようになり、モチベーション向上に成功したという成果も確認されています。
参照:年間で2万5700時間の工数削減 不動産オープンハウスがAI・RPA導入で手にした「予想外」の成果
このようにRPA×AIの導入により、AI・ロボティクスに業務を代替される人への対応も重要視されています。経営層は、他の仕事へ時間を費やすことができるようになった社員が人にしかできない付加価値業務ができるように、シフトチェンジを実現しなければなりません。
業務効率化や人員削減などをゴールにするのではなく、業務改革までを視野に入れたRPAやAI導入が重要です。
まとめ
RPAとAIの大きな違いは、自分で考えて業務を遂行できるかどうかという点です。
正確な単純作業が得意なRPAと、自主的に判断を行えるAIを組み合わせることで、人間が行っている単純作業をはじめとしたさまざまな業務の効率化が可能となります。
ただし、AIが狙った方向に学習できるようにデータをチューニングする必要があるため、適切なチューニングが行えるコンサルタントなどの専門家の存在が不可欠です。
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