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2022.1.26
BPRとは?BPO・RPAとの違い、基礎知識や導入方法を解説
近年の働き方改革の推進などにより、耳にする機会が増えたBPR(企業改革)。本記事では、BPRという用語の意味や基礎知識、BPOやRPAとの違いについて解説します。
BPR導入時の基本的な流れや注意点についても解説していますので、ビジネスコンサルティングなどの背景知識として、ぜひ参考にしてみてください。
BPRとは
BPR(Business Process Re-engineering)とは、『リエンジニアリング革命』(マイケル・ハマー&ジェイムズ・チャンピー 1993年)という著作により広まった、企業改革の手法です。
同著によると、BPRとは「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネス・プロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」と定義されています。
BPRは、仕事の効率化を目指して「特定業務」を改善する「業務改善」とは異なります。
BPRという言葉からもわかるように、ビジネス(Business)を成功させるためのプロセス(Process)全般を根本から再構築(Re-engineering)するのが、BPRです。
BPRの4つのキーワード
上述の『リエンジニアリング革命』によると、BPRを成功させるためには、以下4つのキーワードを含めた構造改革が必須であると言われています。
- 根本的
- 抜本的
- 劇的
- プロセス
ひとつずつ見ていきましょう。
根本的
BPRには、既存業務や組織の在り方について、なぜそうなっているのかを根本から問い直す視点が求められます。
現在行っている業務はそもそもなぜ必要なのか、このような組織や仕組みにはどういったメリットやデメリットがあるのかといったことをひとつずつ言語化し、確認していくプロセスが必要不可欠です。
抜本的
BPRでは、古くなった要素を思い切って捨てる合理性も求められます。慣習だけで進めてきた業務などがあれば、それを切り捨て改善していくことも必要です。
劇的
BPRでは、小さな改善を繰り返し行うことよりも、大胆な改善を行うことが求められます。「企業改革」という言葉が示す通り、できる限り劇的な変化が必要です。
プロセス
BPRでは、ビジネスプロセスを「1つ以上のことをインプットして、顧客に対して価値のあるアウトプットを生み出す行動の集合」と定義されています。
わかりやすく言い換えると、単独の業務要素の足し算ではなく、複数の業務要素のインプットを掛け算することで、より価値のあるアウトプットを生み出すアクションが必要です。
BPRとBPO・RPAとの違い
ここでは、ビジネスシーンで頻出することも多い用語である「BPO・RPA」と、「BPR」の違いについて解説します。
その違いを要約すると、BPRが企業における業務の在り方を根本から見直す「企業改革」であるのに対し、BPOやRPAは業務プロセスの一部の効率化やコスト削減を図る「業務改善」の手法です。
BPOやRPAなどの「業務改善」施策を組み合わせることで、企業活動を一から再構築するのがBPRであるという位置付けです。
以下にてより詳しく見ていきましょう。
BPO
BPO(Business Process Outsourcing)とは、業務プロセスの一部を、専門業者に外部委託する手法です。
たとえば、人事・総務・経理などのバックオフィス系の業務を外部の専門業者に委託することで業務の最適化を図る事例は、BPOに該当します。
RPA
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、これまで人間のみが対応可能と考えられていた高度な作業を、IT技術により代替する手法です。
たとえば、これまで手作業で実施していた業務を、ルールエンジンやAI(人工知能)、機械学習等を含むIT技術により自動化する事例は、RPAに該当します。
BPRのメリット
企業がBPRを導入するメリットは、主に4点あります。
メリット | 概要 |
---|---|
生産性の向上 | 組織レベルでの課題を洗い出すことで、生産性向上を阻む要因が明らかにすることができます。その結果、既存システムが最適化され、組織の生産性や競争力向上が期待できます。 |
意思決定のスピードアップ | 組織の細分化など、意思決定のボトルネックがどこにあるのかが可視化されます。その結果、企業の競争力を左右する意思決定のスピードアップ効果が期待できます。 |
労働時間短縮 | 組織の在り方を見直すことで、無駄な業務を削減することができます。その結果、労働時間の短縮や人件費の削減が可能になります。労働時間の短縮は現場従業員の満足度向上につながるでしょう。 |
従業員の意識改善・スキル向上 | 組織の仕組みやシステムといった「ハード面」の改革を経ることで、現場従業員の職務に対する姿勢や意識といった「ソフト面」も変革されていくという相乗効果が期待されます。 |
BPRの進め方
ここでは、BPRの具体的な進め方について解説します。
フェーズ①検討
BPRを導入する目的や改革すべき対象の業務範囲に関して検討します。
改革目的や改革対象を設定するためには、各部署・各階級の社員から、改善すべきと考える業務をヒアリングします。それと同時に、経営陣からは企業戦略に応じた改善点をヒアリングします。
ヒアリングによってBPRの「対象単位」「キープロセス」と事業システムの再構築単位である「BSU(ビジネス・システム・ユニット)」の3点を明確にすることで、対象の業務範囲が明確化されます。
フェーズ②分析・課題の把握
分析ツールを用いた現状分析を行い、課題を把握するフェーズです。このフェーズを経ることで、現状が抱える課題を明確化し、具体的な解決方法を検討することが可能になります。
具体的には、ABC分析(重点分析)や、BSC(バランススコアカード)といったデータ分析手法を駆使しながら、現状の強みと弱みを把握し、不要な業務の排除、重複業務を整理していきます。
基本原則としては、プロセスが複雑すぎる業務は、より単純化できないかどうかといった視点から改善の余地があると言えます。
フェーズ③設計
分析・課題の把握のフェーズで得た情報から、新たなビジネスプロセスの設計を行います。
BPRは大掛かりな改革であるため、頻繁には行えません。そのため、設計の段階で関係者・関係部署との認識の共有・すり合わせを綿密に行うことが成功の秘訣です。
とくに、以下のような施策をこの段階で取り入れ、設計すると、BPRがスムーズに進みやすいと言われます。
- 複雑な業務を誰でもできる業務に改善する
- 業務の自動化を検討し導入、人員コスト削減を目指す
- 通常業務のアウトソーシングを行う
また、必ずしもすべての改善施策を同時進行で計画する必要はなく、優先順位を決めて、高い効果が得られそうな分野からスモールスタートするといった設計もおすすめです。
なおBPR施策の内容によっては、このフェーズにおいて、ITコンサルや業務コンサル、DXコンサル、RPAコンサルといった各種コンサルタントがプロジェクトに参画する場合もあります。
各コンサルの概要については、以下の記事で解説しています。
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フェーズ④実施
BPRの最終段階は、BPRを実行に移すフェーズです。
BPRは組織全体の変容が求められる、大規模な改革となります。
そのため、設計段階で各部署の各社員とすり合わせを行っていたとしても、実施段階において現場との齟齬が生じる可能性が十分にあります。
またBPR完了までには数ヶ月から数年単位の期間と労力がかかるため、途中でチェックポイント(マイルストーン)を設けておくのが現実的です。
チェックポイントを定め、進捗状況を定期的に共有し合うことで、現場との認識のずれやイレギュラーな課題をその都度微調整しながら、確実に改革を進めることができます。
フェーズ⑤モニタリング・評価
BPRは施策を実行すれば終了という訳ではありません。BPRの目的がきちんと達成されているかを定期的にモニタリング・評価することも重要です。
「目標を達成したか」「旧システムと比較しどの程度効果を得られたか」「定着度合い」「現場からの声」などを逐次モニタリングすることで、潜在的な課題の洗い出しや改善といった前向きなアクションへと繋げることが可能になります。
BPRの2大手法
BPRの手法は、ERP(基幹システム)パッケージを導入する手法と、業務プロセスを分析・可視化する手法の2種類に大別されます。
ERPパッケージはDX(デジタルトランスフォーメーション)の一手段にも位置付けられており、導入する企業が増加傾向にあります。
ERPパッケージには会計や人事労務、販売管理、生産管理といった企業活動に必要なシステムが標準搭載されており、比較的短期間で導入することが可能です。
ただし、BPRの内容によっては、大規模なカスタマイズが行われるケースも多いです。
DXについては、以下の記事で詳しく解説しています。
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BPR導入時の注意点
ここでは、ビジネスコンサルタントの立場からクライアント企業におけるBPRをスムーズに進めるための2つの注意点をご紹介します。
- ビジョン・目標の明確化
- 現場の従業員との摩擦
ビジョン・目標の明確化
BPRは大規模な組織変革であるため、「なんとなく」や「とりあえず」といった漠然とした状態のままビジョンや目標を決めるのはリスクが高い行為です。
検討の段階で、現場から綿密なヒアリングを実施するとともに、経営層が考える戦略のすり合わせも行いながら、ビジョンを組み立てましょう。
また、当初の計画がうまくいかない可能性も想定のうえ、代案や導入を中止する場合の判断基準なども設定しておくのが確実です。
DXが絡むBPRではIT投資が大規模に行われる場合もあるため、費用捻出の算段もつけておく必要があるでしょう。
現場の従業員との摩擦
現行の業務の刷新・廃止といった「痛みを伴う改革」を実施する場合には、現場の従業員からの反発を買う可能性も想定しておく必要があります。
現場の理解と協力を得るためには、できるだけ早い段階で現場と改革のビジョンを共有し、設計にも関わってもらうことが重要です。
ビジョンの共有ができていれば、組織の構成員が一丸となって改革を進められるでしょう。
一方、ビジョンが明確化できていないままBPRを強行してしまうと、現場の従業員に業務廃止の意図が十分に伝わらず、BPRがスムーズに進められない可能性があります。
BPRコンサル市場の現状
超高齢化社会の危機が迫り、国全体の労働者人口が低下しているという現状において、国内の多くの企業がBPRに乗り出しています。
また、政府が働き方改革に本気で乗り出したことも追い風となり、多くの企業においてBPRを積極的に推進する動きが活発化しています。
その結果、BPRを専門に手がける「BPRコンサルタント」の案件は豊富にあります。
コンサルティングファーム求人なども増えていますので、人材派遣サービスやエージェントなどをうまく活用することで、他業種(システムエンジニアなど)からコンサルティングファーム入りを目指すことも比較的実現しやすくなっています。
また、BPRに特化したコンサルティング案件だけでなく、戦略コンサルの委託業務の一部としてBPRを請け負えるケースも多数あります。
戦略コンサル案件については、下記の記事で詳しく解説しています。
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戦略コンサル案件の単価相場は?案件の獲得方法や必要なスキルなど徹底解説!
フリーランスの戦略コンサルの実態や稼ぐコツとは?案件獲得方法についても解説!
そういった「買い手市場」とも言える現状において、コンサルティングファームや大手SIerから独立してフリーランスコンサルタントを目指すコンサルタントの方も増えています。
弊社Liberty Nation(リバティネイション)はフリーランスに特化したエージェントであり、BPRを含む各種コンサル案件をご紹介可能です。ご関心のある方は、ぜひ以下のバナーよりお問い合わせください。
まとめ
BPRとは、BPOやRPAといった「業務改善施策」を組み合わせることで、企業活動を一から再構築する「企業改革」を指します。
我が国の労働者人口の減少や、政府による働き方改革の推進により、企業におけるBPRコンサルのニーズは増加の一途を辿っています。
そのため、今後BPR専門コンサルや戦略コンサルとしてBPRの案件に携わる予定のある方、携わろうとお考えの方は、ぜひ本稿での情報をお役に立ていただければと思います。