業務・業界・技術
2022.1.26
【業界別DX成功事例21選】DX実現までのロードマップ、成功に必要なポイントとは?
INDEX
2018年に経済産業省は「2025年の壁」として、「DXが進まなければ2025年以降、最大で毎年12兆円規模の経済損失が発生し続ける」と警鐘を鳴らしました。
出典:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
さらに2025年が迫るなか、DXへの対応に拍車をかけるきっかけとなったのが、コロナ禍の到来です。ビジネス環境が目まぐるしく移り変わるなか、企業は勝ち抜き、生き残るために、DX実現に向けた取り組みを加速しています。
また企業のみならず、地方自治体がDXを推進する動きも盛んに見られるようになりました。
そこで今回は金融、小売、製造、建設/不動産、医療、運輸、6つの業界に加え、地方自治体におけるDX成功事例とともに、DX成功のために押さえておくべきポイントを紹介します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、「進化したデジタル技術を浸透させ、人々の生活をより良いものへと変革すること」です。
これは「既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーション」とも言い換えられます。
つまりDXは手段ではなく目的です。混同されやすいIT化は、その手段のひとつとなります。
DXとはなにか、基本的な意味や定義の詳細については、以下の記事にて解説しています。
▼関連記事
DXとは?定義や必要性、導入するメリットを成功事例とともに解説!
DX(デジタルトランスフォーメーション)の成功の定義
具体的なDXの成功事例を見ていく前に押さえておきたいのが、成功の定義についてです。
端的にいって、成功の定義は各社がプロジェクトで設定した目的・目標次第となります。
これはそもそも、企業ごとにDXの成熟度は異なり、現状を適切に評価した上で進められる必要があるためです。各社はその成熟度と目的を踏まえ、定性的・定量的な指標(KPI)を設置し、プロジェクトの評価を行います。
対局的には、「2025年の壁」を乗り越えていれば成功とみなすことが可能です。これは既存システムのブラックボックス状態を解消し、データや最新のデジタル技術を活用した、スピーディな事業展開を実現した状態となります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の成功事例【業種別】
すでに数多くの企業、そして地方自治体がDXによる変革を実現させています。
その成功事例として、金融、小売、製造、建設/不動産、医療、運輸、6つの業界に加え、地方自治体に焦点を当てて紹介します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別事例【金融】
金融業界のDX成功事例について、紹介します。
三井住友銀行
出典:三井住友銀行
三井住友銀行は、人手では管理把握しきれなくなった年間35,000件にもおよぶ顧客の声を、AIによるテキスト認識で分類できるNECの「お客さまの声分析ソリューションシステム」を採用。
このシステムを導入したことで、顧客の意見を効率的に分析、顧客ニーズを迅速に把握できるようになりました。
その結果、よりスピーディに要望の反映やサービス品質の改善に取り組めています。
ふくおかフィナンシャルグループ
ふくおかフィナンシャルグループは、デジタルネイティブ世代をターゲットにした次世代のデジタルバンクとして、「みんなの銀行」を立ち上げました。
「全てのサービスがスマートフォン上で完結する新しい銀行」とし、スマホアプリで口座開設から各種金融サービスの利用まで対応しています。
たとえば、コンビニのATMでQRコードをかざせば入出金ができる機能や、預金口座から貯蓄口座への資金移動をドラッグ&ドロップで簡単にできるような機能が備わっています。
参照:スマホ完結の「みんなの銀行」が5月に始動 デジタルネイティブ世代に訴求
大同生命
出典:大同生命
大同生命は、保険契約時の引受査定において、社員の判断サポートにAIを導入しました。
具体的にはAIが事前査定を行い、査定の予測結果とその根拠、類似事例を査定者に提示します。AIに業務の一部を切り出した結果、査定時間の短縮や業務効率化を実現しました。
参照:結局、保険DXとは何か? AXA、大同生命に学ぶ「新発想」のAI活用・商品設計
DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別事例【小売】
小売業界のDX成功事例について、紹介します。
トライアル
出典:トライアル
トライアルは運営店舗で活用する、セルフレジ機能付きのカート「スマートショッピングカート」を開発しました。来店客はカートに付いたバーコードリーダーに商品バーコードをスキャンすることで、レジレス決済が可能となります。
また、陳列棚を映すカメラに映し出された棚の状況をサーバーに送り、商品の在庫状況をデータで把握できるようになり、欠品による販売ロスを防ぐことが可能となりました。
参照:レジはショッピングカート。トライアルが関東初「リテールAIストア」
セブン&アイ・ホールディングス
セブン&アイ・ホールディングスは、グループ各社のECビジネスにおける配送効率の最適化を目指し、グループ共通の「ラストワンマイルDXプラットフォーム」を構築しました。
たとえば、セブン‐イレブンの商品配送サービス「セブン‐イレブンネットコンビニ」において、AI技術を活用し、車両・ドライバー、配送料、配送ルート、受取場所の最適化を実施しています。
ファーストリテイリング
出典:ファーストリテイリング
ファーストリテイリングでは、レジ横のスペースに商品が入ったカゴを置くだけで一括して商品登録ができる「セルフレジ」を導入しています。
活用されているのは、商品に取り付けられたRFIDタグを一括で読み込む仕組みです。一般的なセルフレジのような「バーコードの読み取り作業」が必要なく、顧客の手間や不満を解消しています。
参照:ユニクロの導入したセルフレジの仕組みとは?メリットも紹介
DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別事例【製造】
製造業界のDX成功事例について、紹介します。
トヨタ自動車
出典:トヨタ自動車
トヨタ自動車では、「月額定額制」でトヨタの自動車が乗り放題となる、サブスクリプションサービスを展開しています。
自動車への価値観が、所有から利用へとシフトする時代を見越して「移動すること」に特化した新たなビジネスモデルとして構築しました。
参照:KINTOを徹底解説!トヨタのサブスク、コミコミ定額で利用可能
三菱電機
出典:三菱電機
三菱電機は、製造業向けに幅広いソリューションを提供する総合FAメーカーとして、IoT化によるビッグデータの活用でスマート工場を実現しています。
たとえば生産性向上、品質向上、省エネ、安全性向上など、製造現場の課題解決を行っています。
AGC
出典:AGC
AGCはガラス製造の大手企業で、AIを使ったQ&Aシステムを開発・導入しました。知りたい質問を専用サイトで入力すれば、熟練技術者(エキスパート)による適切な回答がAIから提示さるといったシステムです。
これにより、問い合わせ対応工数を削減しながら、組織全体の知識・技能レベルの底上げが可能となりました。
参照:AGCが「匠の知見」伝承に用いたAIの技、質問してから回答得るまでが一瞬に
DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別事例【建設/不動産】
建設/不動産業界のDX成功事例について、紹介します。
長谷工コーポレーション
出典:長谷工コーポレーション
長谷工コーポレーションでは、簡単な質問に回答すると、AIが同社の顧客データをもとに、おすすめの新築分譲マンションを提案するサービスを提供しています。
レコメンドされた物件は営業担当との面談不要で、そのままモデルルームの見学ができる仕組みも構築しています。
参照:新築マンション探しをサポートする「マンションFit」サービス開始
小松製作所
出典:小松製作所
小松製作所は、建設機械の位置や稼働状況を一元管理するシステムを開発しました。
遠隔から機械の異常の検知をはじめ、作業効率の悪い機械や稼働していない機械を把握することで、作業時間のムダを削減することができます。
世界中の機械の稼働状況が分かるため、作業管理の効率化、実績集計の省力化が可能で、海外工場の管理など出張コストが高い場合に効果的に活用できます。
野村不動産
出典:野村不動産
野村不動産では、不動産売買契約の手続きにおいて、電子化を推進しています。住宅の販売業務から先行し、2021年11月から一部の仲介店舗にも拡大しました。
契約業務の効率化や書類の保管業務の削減、さらに遠隔地での取引も可能となり、顧客満足度の向上にも貢献しています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別事例【医療】
医療業界のDX成功事例について、紹介します。
大塚製薬
出典:大塚製薬
大塚製薬は、NECと共同で服薬支援を目的としたシステムを開発しました。具体的に、脳梗塞の患者へ服薬する時間をLEDライトで自動通知したり、服薬履歴をスマホで確認したりといったことが可能です。
服薬のタイミングをはじめとしたデータを収集し、ビッグデータとして分析することで、新たな価値・ビジネスの創出にも取り組んでいます。
参照:脳梗塞再発抑制薬の毎日の服薬を支援する 「プレタールアシストシステム」に対応した専用容器を国内申請
中外製薬
出典:中外製薬
中外製薬は、独自にAI技術「MALEXA-LI」を構築しました。
「MALEXA-LI」は抗体創薬支援技術のことで、標的抗原に結合する抗体配列を選抜するための配列生成法を開発。これを活用し既存の抗体と比べ、1,800倍以上も結合強度の高い抗体の取得に成功しています。
参照:中外製薬の人工知能(AI)を用いた抗体創薬支援技術 MALEXA-LIの成果がScientific Reportsに掲載
大日本住友製薬
出典:大日本住友製薬
大日本住友製薬は、リモート専任MRがオンライン会議システムを用いて医療関係者に医薬品情報を提供するサービスを提供しています。新型コロナの影響で対面での医療情報提供が困難になったことが、このシステム導入のきっかけとなりました。
とくに面談予約はチャットボットを用いて、手軽に行うことが可能です。
参照:デジタル技術を介した医療関係者向けの新たな情報提供 iMR およびvMR 開始のお知らせ
DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別事例【運輸】
運輸業界のDX成功事例について、紹介します。
日本通運
出典:日本通運
日本通運はソフトバンクと共同で、物流業界のDXを支援するための新会社「MeeTruck株式会社」を設立しました。第1弾として、トラック輸送を担う物流事業者向けのクラウド型配車支援サービスを提供しています。
同サービスでは受注した運送業務の案件登録やトラックの割り当て、勤務計画表の作成など、場所や時間にとらわれずアプリ上で誰でも簡単に行うことが可能となりました。
参照:ソフトバンクと日本通運、物流DXを支援する新会社を設立
日本郵便
出典:日本郵便
日本郵便は、AIを活用した配達業務支援システムの試行導入を行いました。これはゆうパックなどの荷物に貼付されたバーコードをスマホでスキャンすると、AIが最適な配達ルートを自動作成してくれるシステムです。
とくに再配達などによる配達ルートの変化もリアルタイムで更新されるため、経験の浅い配達員でも安心して効率的な配達業務ができます。
参照:日本郵便がDXでラストワンマイルの課題に挑む――「AIを活用した配達業務支援システム」の共創に迫る。
日本交通
出典:日本交通
日本交通では、自社だけでなく他社のタクシーも配車出来る、日本初のタクシー配車アプリ「日本交通タクシー配車(現Japan Taxi)」を開発しました。徐々に利用者が増え、DXの観点から業界をリードする存在となっています。
また、決済とデジタルサイネージ機能を備えた「JapanTaxiタブレット」、さらには「相乗りタクシー」や「変動迎車料金」の実証実験など、業界としての新たな需要獲得にも取り組んでいます。
参照:日本におけるDX先進事例
DX(デジタルトランスフォーメーション)業種別事例【地方自治体】
地方自治体のDX成功事例について、紹介します。
三重県
出典:三重県公式HP
三重県は2021年4月、「三重県版デジタル庁」の位置付けで、「デジタル社会推進局」という新たな局を設立、これにより以下のようなDXを導入しました。
- AIを用いて道路の老朽化度合いを把握する取り組みにて、メンテナンス予算を客観的に算出できるようになった
- AIで教育格差をなくすプロジェクトでAIドリルでの学習方法を取り入れたところ、就学支援資金を利用している低所得世帯の子どもの学力が向上、他の生徒より高い効果が出た
また、交通・観光・物流・生活などに使う「空飛ぶクルマ」の実現を目指すプロジェクトなども進めています。
参照:三重県流の「あったかいDX」とは、鈴木知事が明かすデジタル活用術
参照:ここまで進んでいる!地方行政のDX最前線
神戸市
神戸市は、「市役所内の働き方改革」と「市民サービス向上」の両面から、DXによる改革を行っています。
たとえば「市役所内の働き方改革」で進められるのが、民間のDXツールの積極的な活用です。業務上のペーパーレス化をはじめ、グループウェアチャットの導入、消耗品発注システムなどを導入し、全国自治体の倍以上のスピードで人員削減を実現させています。
「市民サービス向上」においても、AIのチャットボット、手続き案内のスマートナビ、FAQ検索システムなどを相次いで導入しています。
参照:神戸市DXの事例紹介 ~「職員が考える時間」を生み出す業務改革~
愛媛県
出典:エールラボえひめ
愛媛県は2021年3月、「愛媛県デジタル総合戦略」を策定しました。県民本位・市町との協働・官民共創の3つが基本方針として掲げられ、行政、暮らし、産業を横断しDXに取り組む方針が発表されています。さらにDX推進体制の強化を目的に、「デジタル戦略局」も設置されました。
実際に2021年4月に開設されたのが、DX推進プラットフォームの「エールラボえひめ」です。事業者や研究機関、個人、自治体などが協働し、DXによる地域課題解決プロジェクトを推進するためのプラットフォームとして運用しています。
このプラットフォームを利用することで、プロジェクトを進める仲間が増えたり、自治体のサポートが受けられます。
参照:愛媛県 デジタル総合戦略
参照:ここまで進んでいる!地方行政のDX最前線
DX推進に、いま取り組むべき理由
ここまで企業や地方自治体における成功事例を紹介してきました。
それではなぜ、いま企業はDXに取り組むべきなのでしょうか。その主な理由を紹介します。
スマートフォン普及による、消費行動の変化
スマホひとつあれば、いつでもどこでもほしい商品が購入できる時代となりました。
そのため、現在小売業界では、近隣店舗だけでなく全国の店舗・ネットショップが競合です。こうした現代社会における消費者のニーズに応える上で、DXは必要不可欠となっています。
ディスラプターの登場による、既存モデルの変革
従来のビジネスモデルを破壊(ディスラプション)する動きは、いまやあらゆる業界で起きています。その代表例のひとつが、配車アプリのUber(ウーバー)です。
既存のビジネスモデルが崩れてきている今、企業が生き残るためには既存事業の根本的な転換も検討する必要に迫られています。
ウィズコロナにおける、労働環境の変化
「2025年の壁」として警鐘を鳴らされるなか、コロナ禍の到来によってDX推進の機運は一層高まることになりました。
たとえばBCP(事業継続)対策の観点から、多くの企業が導入したのがテレワークです。こうした新たな働き方に対応できない企業は、事業の継続リスクを抱えることはもちろん、採用面においても不利になっています。
少子高齢化による、人手不足の深刻化
少子高齢化が進む日本では、同時に各業界で人手不足が深刻化しています。
少ない人数で現在と変わらない生産性を実現するために、デジタルによる業務効率化は急務となっています。
DX成功に欠かせないポイント
もうひとつ注目したいのが、DXを成功させるために押さえなければならないポイントについてです。
以下にて重要なポイントを3つ、ご紹介します。
戦略とビジョンの構築
DX成功に欠かせない要素が、目指すべき方向性(ビジョン)と実現に向けた戦略を明確にしておくことです。
ビジョンと戦略なきDXではゴールが見えず、本来は手段であるはずのテクノロジーに振り回され、ただただ時間や労力、費用を消耗して終わってしまうこととなります。
DX実現に向けた、組織の風土・体制の構築
DXとは、顧客を第一に考え、これまで存在しなかったようなサービスを生み出すチャレンジングな営みです。たとえばビジネスモデルの変革に伴い、各部署や関係者から反発を受ける可能性も大いに考えられます。
そのため重要なのが、組織としてある程度失敗を許容するような風土を醸成しておくことです。経営者や各部署のキーマンを巻き込み、プロジェクトを推進できる体制を構築するのもひとつの手段となります。
DXを推進できる人材の確保
DXを推進していく上で、DXに精通した人材は欠かせません。
しかし、こうした専門的な人材の雇用・育成には、相応の時間が必要です。そのため、専門性を持ったコンサルタントを外部から迎えることが重要となります。各企業はDX推進プロジェクトに適した人材を確保することが急務と言えるでしょう。
DXコンサルの仕事内容やフリーランスとして案件を獲得する方法などについては、以下の記事にて解説しています。
▼関連記事
DXコンサルとは?仕事内容や案件事例、求められるスキルについて解説
DX領域で副業をする方法とは?副業事例や副業先の探し方を解説!
まとめ
ビジネス環境が大きく移り変わる時代、企業が生き抜くためにはDXへの対応が必要不可欠となっています。
ただしDXを成功させるためには、高いハードルがあり、専門的な知見や経験を持った人材の力が必要です。とくにDXプロジェクトを推進した経験のある人材は貴重であり、コンサルタントとして多くの企業から求められています。
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