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2021.12.27

M&Aコンサルタントの仕事内容とは?必要な資格や年収相場についても解説!

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M&Aコンサルタントは、企業間の合併や買収などM&A全般に関わる仕事を担当します。

もはや企業間のM&Aは当たり前の時代となり、年々需要が高まっている業界の一つとして知られています。大手のみならず中小企業でもM&Aに対して活発になってきているのが現状です。

需要の高まりを受け、転職市場でも注目されているM&Aコンサルタントについて、詳しく知りたい方も多いのではないでしょうか。

今回は、M&Aコンサルタントの仕事内容を紹介しながら、必要な資格と年収相場について解説していきます。これからM&Aコンサルタントを目指す人は、ぜひチェックしてみてください。

M&Aコンサルタントの仕事内容

M&Aコンサルタントとは、M&Aに関する調査、交渉や実行などを進める仕事です。契約を結んだ買い手もしくは売り手の利益を最大限に出すことを目的に存在しています。

M&Aコンサルタントの仕事内容は、大きく分けて次のとおりです。

  • M&A戦略を立案する
  • M&A対象企業の選定
  • M&A交渉に関するサポートやアドバイス
  • デューデリジェンスの実施
  • PMIを進める

似たものとして戦略コンサルや財務コンサルなどがありますが、業務の範囲が異なります。

戦略系コンサルは企業全体の戦略を提案する仕事で、M&Aによる事業統合のサポートはそこに含まれているのが一般的です。

一方、財務コンサルタントは資金調達戦略やIR戦略からM&A手段を練ります。

M&A戦略を練る

まず行うのがM&A戦略の策定です。

クライアントの買収・売却の理由を考え、どのようなスケジュールで進めていくかをクライアントに提案していく必要があります。

具体的な方法を提示し、そのクライアントに適した戦略に落とし込んでいきます。

M&A対象企業の選定

次に具体的なM&A対象の企業選定を進めます。

候補企業の財務情報や経営情報など、専門的な観点から調査・分析を行なっていかなければいけません。

この段階で交渉相手を選定するための「買収候補リスト」を取りまとめておくことも重要です。

M&A交渉に関するサポートやアドバイス

実際に企業がM&Aの実行に向けた交渉を行うときには、そのサポートやアドバイスに回ります。

具体的には人事システムや情報システム、業務プロセスの統合などについての提案です。

経験豊富なM&Aコンサルタントが仲介することにより効率的かつ低リスクで交渉を進められるようになります。

デューデリジェンスの実施

企業との基本合意書締結後、「デューデリジェンス」を行います。

「デューデリジェンス」とは、買収対象企業の財務状況に関する調査結果を元に具体的な買収金額を算定することを指した言葉です。

デューデリジェンスで得た分析結果に基づいて、相手企業との交渉ポイントの整理や会議調整を行わなければいけません。

PMIを進める

M&Aが実行されたあとはPMIを実施し、経営統合を実現させます。

PMI(ポストマージャーインテグレーション)とは組織統合を指す言葉です。M&A成功のカギを握る重要なフェーズでコンサルタントの腕が問われる部分となります。

この段階で統合プランの策定から、PMOとしての進捗管理、新組織体制定着への各種マニュアル整備を実施します。

またそれに加え、M&A後の会計・税務上の実務処理に関するアドバイス、IT全体構想策定や中長期的なシナジー効果創出計画の立案・支援など、M&Aに付随するさまざまな業務を請け負わなければいけません。

M&Aコンサルタントが激務と言われる理由

一般的にM&Aコンサルタントは激務と言われています。

主に次のような理由があるからです。

  • 業務量が多い
  • クライアントとの信頼構築が大変だから
  • 多くの知識を習得しなければいけない
  • 完全成果主義の傾向が強い業界だから

業務量が多い

業務量が多いのが激務と言われている理由のひとつです。

その最たるものに資料の作成があります。

プレゼンテーションや提案に関しては資料作成が必須です。M&Aコンサルタントの作成資料は社内で閲覧するものではなく、クライアントに提示するものがメインなので完璧な資料作りが必要となります。

そして自己で完結するものではなく、上長によるチェックを何度も受けて修正を繰り返さなければならず、場合によっては就業時間に収まり切らないケースも発生します。

実際に資料作成はアナログによる作業方法をとっているという企業も多いです。

クライアントとの信頼構築が大変

クライアントとの信頼関係構築が大変という点でも激務と言われています。

M&Aは企業の中核を担う性質上、オーナー企業の社長と直接やり取りすることも多いのが特徴です。土日に連絡が入るケースもあります。

さらに経営陣と連携が取れていても現場の協力が得られないこともあるかもしれません。

そのため、こまめに現場へ足を運び信頼関係構築を目指さなければいけないのです。

多くの知識を習得しなければならない

M&Aコンサルタントはプロジェクトごとに内容が異なるので、非常に多くの知識が求められます。

既存のクライアントなら比較的やり取りもスムーズですが、未知の業界を担当する場合は必要な知識を習得するところから始めなければいけません。

そのため、クライアントのニーズを聞き出すためのヒアリングは何度も行う必要があります。しかしあまり基本的なことばかり質問していると、クライアントからの信頼を損ねてしまう可能性があるのも難しい部分です。

完全成果主義の傾向が強い業界だから

M&Aコンサルタントは業界的に完全成果主義の傾向が強いです。

M&Aコンサルタントは長時間労働が評価に直結することがない職種で、M&A実行に関してどれだけの成果を上げられたかが問われます。

実際、M&Aコンサルティングで有名な野村総合研究所、マッキンゼーなどの評価制度(※1)は成果主義に基づいて行われています。

書類作成をしながら、どのように成果を出すのか試行錯誤を繰り返している時間は激務と捉えてしまう場合があるでしょう。

出典:※1 アンテロープ「コンサルティングファームにおける評価・査定」

M&Aコンサルタントの激務改善のための働き方改革

以上の理由からM&Aコンサルタントは激務と言われていますが、徐々に働き方の改善に動き出している企業が増えていることも事実です。

この章では2社の事例を取り上げます。

例:デロイトトーマツグループ

デロイトトーマツグループは、M&A戦略の立案、実行、組織・事業再編などの支援にも関与している企業です。

そんなデロイトトーマツでは「メンバーの心身の健康力向上」を目的に、業務改善に取り組んでいます。

具体的には、以下の4つの項目に分け取り組みを行っています。

項目 具体的な取り組み
組織風土改革 パートナーやディレクターによる働き方改革の宣言、グループシナジー加速のための新オフィス解説など
生産性改革・スマートワーク RPAによる業務効率化、テレワークの拡大など
Employee Experience
(従業員の満足度や経験・スキルアップ)
キャリア形成・育成を支援するコーチ制度(中長期的)、ワークライフマネジメント(デロイトトーマツ保育園の開園や家事代行サービス)など
健康経営 長時間労働撲滅・休暇取得促進をグループモニタリングなど

参照:デロイト トーマツ グループの働き方改革
ワークライフマネジメント(両立支援の取り組み)

例:株式会社M&A総合研究所

M&A総合研究所は2018年10月設立の企業です。

代表取締役CEOの佐上峻作氏は、M&A業界の非効率でアナログな働き方の課題意識からM&A総合研究所を立ち上げました。

中でも大きな業務改善だと言われているのが、人がやる必要のない作業は一切やらないように社内システムを構築した点です。

一例ですが、営業が求めるDXを積極的に取り入れ2020年3月までにシステムを1,000回以上アップデート、これにより効率化が進み、他社より営業活動時間を15~20%も捻出できるようになりました。

その結果M&Aの仕事に注力できるようになり、入社後2ヶ月程度の社員が最初のアドバイザリー契約を結べるようになっています。

上記のような考えを生かし、ビッグデータとAIを活用した企業同士のマッチングサービスを提供、今もなおM&A仲介業務に役立てています。

参照:M&A業界への転職・トップインタビュー M&Aテックで働き方を変える! M&A総合研究所CEO佐上峻作氏が描くビジョン | リクルートへの転職ならサムライソウル

ここでご紹介した以外にも、各コンサルティングファーム、企業にて働き方改革が行われています。

上記以外の企業での働き方改革の取り組みについては、以下で詳しく解説しています。

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M&Aコンサルタントに必要なスキル

M&Aコンサルタントに必要なスキルを5つ紹介いたします。

  • 事業に対する理解力
  • コミュニケーション能力
  • 幅広い財務知識
  • 論理的思考力
  • 交渉力

事業に対する理解力

M&Aコンサルタントには、それぞれの事業に対する理解力が求められます。

収益性や安全性、成長性などは企業によって異なり、社内マニュアルだけでは通用しない世界だからです。

しっかりと買収対象となる事業を理解できていれば、財務諸表では知り得ない顧客ニーズを導き出すことができます。

コミュニケーション能力

M&Aコンサルタントは、社内外におけるコミュニケーション能力も必要です。

ここで述べているコミュニケーション能力とは、会話の中から相手の意見・意図・要望を正しく汲み取れる能力を指します。コミュニケーションなしにクライアントの問題を改善することはできません。

また企業訪問だけでなく、フォーマルな会食にも参加して人間関係を構築しなければいけない場面も多くあります。

幅広い財務知識

M&Aに関することはもちろん、幅広い財務知識が求められます。

M&Aコンサルタントには、M&A実行に至るまでに財務モデリングやデューデリジェンスといった高度かつ専門的な仕事が含まれているからです。

士業系の資格を持っていれば、幅広い財務知識を有している証明になります。

論理的思考力

M&Aコンサルタントは論理的思考力が求められます。

単純な知識だけではクライアントへ最大限の価値を提供しにくい業界だからです。

「ミーティング前に目的を明確にすること」「結論から話し、自分の考えを理由づけて説明すること」などで論理的思考力は高められます。

また優秀なM&Aコンサルタントは、新聞やニュースの内容をただ聞き流すのではなく常に疑問を持って見ることにより論理的思考力を培っていると言われています。

交渉力

M&Aコンサルタントは交渉力が必要です。

基本的に売り手と買い手は対立関係にあるため、M&Aコンサルタントが上手く間に入って交渉をしなければいけません。

交渉力がM&A成功のカギを握っていると言っても過言ではありません。

M&Aコンサルタントに関係する資格

M&Aコンサルタントに必要な資格で、代表的なものを4つ紹介します。

  • 各種士業系の資格
  • M&Aエキスパート認定制度
  • M&Aスペシャリスト
  • JMAA認定M&Aアドバイザー

各種士業系の資格

弁護士公認会計士税理士といった士業系の資格はM&Aコンサルタントの業務において非常に有利です。

いずれも取得するための難易度は非常に高いですが、持っていれば優秀なM&Aコンサルタントとして重宝されるでしょう。

M&Aエキスパート認定制度

M&Aエキスパート認定制度は、事業承継・M&Aエキスパート協会が運営する試験制度です。

主に事業承継と中小企業のM&Aに関する基本的な知識を学べます。そのため中小企業のM&Aや事業承継で活躍したい人におすすめです。

認定試験は「事業承継・M&Aエキスパート」、「事業承継シニアエキスパート」、「M&Aシニアエキスパート」の3種類があります。

M&Aスペシャリスト

M&Aスペシャリストは日本経営管理協会による、M&Aに関する経営コンサルタントの資格です。

より実務に特化した資格で、M&Aの第一線で活躍する人が講師なため、資格取得後も役に立つ内容を学べます。

試験合格後に資格認定を申請し、M&Aスペシャリスト資格審査委員会から承認されることで初めて資格取得となるのが特徴です。

JMAA認定M&Aアドバイザー

JMAA認定M&Aアドバイザーとは、一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)が認定している資格です。

養成講座を受講、JMAAの正会員に入会することで資格を取得できるため、他よりも取得しやすさがあります。

JMAAでは会員同士のコミュニティが形成されていて、M&Aアドバイザーの実務に役立つ人脈を獲得できるのが魅力です。

M&Aコンサルを手がける企業

実際にM&Aコンサルを手がけている企業を、「金融機関」「会計事務所」「M&A仲介業者」に分けて数社紹介いたします。

金融機関

日系・外資系金融機関の代表的な企業は6社です。

  • 三菱UFJフィナンシャルグループ
  • 三井住友フィナンシャルグループ
  • みずほフィナンシャルグループ
  • ゴールドマンサックス
  • JPモルガン
  • モルガン・スタンレーなど

金融機関系のコンサルティングファームはM&Aコンサルタント機能のほか、債権や株式の引受などの証券業務をグループで連動して提供しているのが特徴です。

大手外資系金融機関は世界中でM&Aの実績があるため、クロスボーダー案件や超大型M&Aを請け負うこともあります。

ITや組織再編のノウハウや知見が求められる業界で、M&A後のPMIに関わることはありません。

会計事務所

M&Aコンサルに関わる会計事務所で代表的なものは3社です。

  • デロイトトーマツ
  • プライスウォーターハウスクーパース
  • KPMGなど

コンサルメインのためファイナンス機能としては弱い部分がありますが、M&A戦略の立案といった上流の業務からM&A下流のポストマージャーインテグレーション(PMI)にまで全フェーズにおいて財務・税務の面から幅広く関与しているのが特徴です。

M&A仲介業者

M&A仲介業者を担う代表的な企業は3社です。

  • M&A総合研究所
  • 日本M&Aセンター
  • M&Aキャピタルパートナーズなど

M&A仲介業者は、買手と売手のマッチングが主な業務です。

M&Aの初期フェーズから契約締結に至るまで、中立的な立場から双方の利益を最大化するように取引の取りまとめしています。

M&Aコンサルタントのキャリアパス

M&Aコンサルタントのキャリアパスはいくつかありますが、主に「専門性を活かしてキャリアアップ」「企業専属のM&Aとして活躍」「フリーランスとして独立」の3パターンです。

特に昨今の事情によりテレワークが普及しているので、フリーランスとして働こうとする動きが増加しています。

業界未経験での転職は可能?

M&Aコンサルタントは知識と経験が必要なので、未経験はハードルが高いですが20代や30代であれば決して不可能ではありません。

若手は実務経験の有無だけでなく、コミュニケーション能力や営業力、交渉力といったスキルも重視してくれるからです。

もしM&Aコンサルタントに関する資格を持っていれば、業界未経験であっても採用担当者の目に止まる可能性が十分にあります。

M&Aコンサルタントの年収相場

M&Aコンサルタントはの年収は、クライアント企業の規模や担当領域によって異なるのが特徴です。

一般的にはアソシエイトで500〜900万円マネージャーは1,000〜1,500万円シニアマネージャーやパートナークラスであれば2,000万円以上(※2)のケースもあります。

出典:※2 アクシスコンサルティング「M&Aアドバイザリーの年収」

フリーランスは報酬の幅が広く、実力があれば上記よりも高い単価で仕事を獲得できることが可能です。M&A案件は、報酬や業務範囲についての交渉をサポートしてくれるフリーランス専用のマッチングエージェントでの獲得がおすすめです。

M&A関連の仕事の年収相場は、以下の記事にて詳しく解説しています。

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まとめ

M&Aコンサルタントは業務範囲が広く激務と言われる業種ですが、今後業務改善を図る企業は増えていきます。また企業が存在する以上、需要の絶えない仕事で将来性もあり魅力のある仕事の一つです。

M&Aコンサルタントとして今後活躍したい人は、必要な能力やスキルを知った上で経験を積んでいきましょう。

コンサルティングファームでの経験に自信のない人は、フリーランスとして案件を受けながら実績を積む方法もあります。

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